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右門捕物帖 七化け役者(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

品川の宿、尾張の駕籠に矢一本

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
21,426字
読了目安
約43分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第十六話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六、小男の善光寺辰が江戸の事件を解く連作。五月の晦日、参覲交替で江戸に入る尾張徳川家の行列を、将軍名代の松平伊豆守が品川の宿に出迎える。その晴れの場で、行列の駕籠に一本の矢が射込まれた。ところが尾張家の家中は右門を寄せつけようとせず、やがて伊豆守からも思いがけない書状が届く。大藩の威光の前に、右門が珍しくふて寝をする一編。

あらすじ

五月晦日、品川の宿で尾張家の行列を出迎えた伊豆守のあいさつのさなか、駕籠の一つに矢が射込まれる。駕籠の主は小姓姿に装った尾張侯寵愛のおへやさまらしいが、尾張の家来は右門を近寄せない。右門は矢が西条流の半弓のものと見て、河童坂の弓師六郎左衛門を訪ねるが、心当たりはないと突っぱねられる。やがて伊豆守から、尾張家の内々の頼みにより吟味を差し止めるとの書状が届き、右門はくやしさに床へもぐりこむ。翌朝、小伝馬町のもめん問屋駿河屋の手代が駆けこんでくる。ご家人ふうの男が千両をゆすり取り、追いかけた番頭が見ると、男はいつの間にか按摩に化けていたという。しかも男の道具箱には半弓らしいものがあり、駿河屋の勘当した息子に似ていたと聞いて、右門は跳ね起きる。品川のくせ者も、ご家人も按摩も、同じ早変わりの役者だとにらんだのである。伝六と辰に江戸の芝居小屋を洗わせると、尾張から下ってきた一座に、駿河屋の勘当息子らしい早変わり役者の市村宗助がいるとわかった。右門は小屋に乗りこみ、花道へ逃げた宗助を辰の投げなわで捕らえる。宗助は勘当されて名古屋へ流れ、茶屋女のお喜久に百両を貢いでだまされた。そのお喜久が尾張侯の寵愛を受けるおへやさまに出世し、昔を知る宗助に刺客を放ったため、先手を打って矢を射込み、親から千両を奪って高飛びしようとしていたのだった。右門はおへやさまの素性を口外せぬと記した書状を添え、宗助を尾張家へ送り届ける。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  ――ひきつづき第十六番てがらにうつります。  事件の勃発いたしましたのは、五月のちょうど晦日。場所は江戸第一の関門である品川の宿、当今の品川はやけにほこりっぽいばかりで、さざえのつぼ焼きのほかは、あってもなくてもいいような、場末の町ですが、このお時代の品川となると、いろいろな点から、なかなかふぜいのあったもので、上方から下ってきた旅人には、ほっと息をつくやれやれの宿、江戸をあとに旅立つ者には、泣きの涙の別れの関所――。古い川柳の中にもこんなのがございます。

「右門捕物帖 七化け役者」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 すっかり口まねをして、とんだ説法をしたものでしたから、破顔一笑、腹をよらんばかりにいったのは名人でした。 「偉いところで、今度は伝六兄いが、おれに早変わりしちまったな。思いのほかに変わり方があざやかだから、おめえにも軍鶏駕籠を雇ってやろうか」  よき主従のなごやかなやりとりをめで喜ぶかのように、大川渡った初夏の江戸風が、そよそよとさわやかに吹き通っていきました。

「右門捕物帖 七化け役者」佐々木味津三(青空文庫)

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