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右門捕物帖 朱彫りの花嫁(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

花嫁の腕に覚えのない朱彫り

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
22,747字
読了目安
約45分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第三十二話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。隅田川を走る夏の通り雨のなか、日本橋本石町の薬種問屋の若主人が、迎えたばかりの花嫁を連れて向島の寮へ渡る。ところが湯殿に入った若主人は真っ青になって飛び出し、八丁堀の右門へ急ぎの手紙を届けさせる。秘中の秘とされたのは、花嫁の二の腕に、知らぬ間に彫られていた朱のいれずみだった。夏の江戸の湯屋や彫り師の家を舞台にした一編。

あらすじ

夏の夕立のなか、本石町の薬種問屋林幸の若主人幸吉は、同じ町内の薬種問屋大西屋の妹娘お冬と祝言をあげ、その足で向島の寮へ渡る。湯殿で、雪のように白いお冬の二の腕に「喜七いのち」と朱で彫られた小さないれずみを見つけた幸吉は、右門に内々の助けを求める。お冬は前日の夕方に湯に入ったときにはなかったと泣くばかりで、喜七という名にも覚えがない。右門は二の腕に、気欝封じに姉に勧められたというにんにく灸のあとを見つける。翌朝、右門は天狗風呂の朝湯に何度も入り、同じ朱の彫り物を背負った男から、彫り師が神田代地の伊三郎だと聞き出す。伊三郎は、その朱は薬屋に頼んで作らせた自分の自慢の色だと言い、弟子の栄五郎が一昨晩出かけたまま帰らないと明かす。右門は栄五郎の判じ絵の扇子から、両国の新花屋の小菊のもとにいる栄五郎を見つける。栄五郎は、目隠しをされて薬の匂いのする家に連れていかれ、障子の穴から差し出された腕に「喜七いのち」と彫って五十両を受け取ったと白状する。右門は大西屋に乗りこみ、姉のお秋から奉公人や婚礼の客の名を調べるが、喜七の名はどこにもない。行き詰まった右門は、お秋の話の食い違いと、にんにく灸が人を眠らせる灸であることに気づく。お秋は、母代わりに育ててきた妹を手放すのが惜しくなり、ありもしない男の名を彫らせて縁談を壊そうとしたのだった。右門はお秋を向島の寮へ送り、正直に打ち明けさせる。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  その第三十二番てがらです。  ザアッ――と、刷毛ではいたようなにわか雨でした。空も川も一面がしぶきにけむって、そのしぶきが波をうちながら、はやてのように空から空へ走っていくのです。

「右門捕物帖 朱彫りの花嫁」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「伝六、なんだかいいこころもちだな……」 「ちげえねえ。どうでござんす、もういっぺんお昼の朝湯にへえって、たこになりましょうかね」 「ごめんだよ。夏場の酢だこは身の毒だとさ」  柳の葉かげをくぐって遠のいていく越後上布のうしろ姿が、心憎い涼しさでした……。

「右門捕物帖 朱彫りの花嫁」佐々木味津三(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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