右門捕物帖 闇男(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物
日に当たれぬ旗本と殺された小娘
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 18,999字
- 読了目安
- 約38分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第三十話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。梅雨の五月、奉行所で吟味を見物していた右門と功名争いの相手あばたの敬四郎に、麻布の北条坂で小娘が絞め殺されたとの知らせが入る。二人は同時に奉行所を飛び出し、またしても手柄争いが始まる。手がかりは孫太郎虫を売り歩く少女たちの仕着せ。雨の向島で耳にした、日に当たると震えだす旗本「闇男」のうわさが事件を思わぬ方へ導く。
あらすじ
梅雨のさなか、麻布の北条坂で十三、四の小娘が絞め殺されているのが見つかる。右門と敬四郎は張り合って奉行所を出るが、敬四郎が現場で死骸の手に握られた袖のきれを手がかりに馬喰町の新右衛門の店へ駆けつけると、右門はすでに先回りしていた。殺されたおなつは孫太郎虫の売り子で、神田旅籠町の安宿に仲間と泊まっていた。右門は宿でおなつと連れだって麻布へ出た売り子おくにの仕着せの袖が裂けているのを見つける。おくには前日あわてて戻り、浅草の観音へ願かけに行くと言って出たままだった。荷物の中の孫太郎虫の黒焼きの包みから、「こっちがあぶなくなった。すぐに出かけろ」という男の走り書きと、三つ刺したくし団子の判じ絵が出てくる。敬四郎は浅草へ向かい、右門はくし団子を言問団子と読んで向島へ渡る。団子茶屋で右門は、近くの旗本屋敷の若い主人友次郎が、日に当たると震えだす奇病にかかり、昼は真っ暗な納戸にこもっていて「闇男」と呼ばれていると聞く。そこへ伝六が、おくにが浅草の仁王門前で袈裟がけに斬られたと知らせてくる。右門は茶屋に現れた闇男屋敷の中間七造を捕らえる。七造はおくにの兄で、友次郎はひと月前に首をつって死んでいた。母と伯父の市崎宗左衛門は、上役の娘との縁談のため死を隠し、身代わりを探していた。その秘密をかぎつけたおなつを七造が絞め、宗左衛門が口封じにおくにを斬ったのだった。右門は七造にゆすりを演じさせ、屋敷の外へ追ってきた宗左衛門と母を捕らえ、敬四郎に手柄を分ける。
登場人物
- 近藤右門 南町奉行所の同心。むっつり右門。判じ絵を読んで向島へ渡る
- 伝六 右門の手下の岡っ引き。手柄争いにやきもきしながら走り回る
- あばたの敬四郎 右門と功名を争う同心。いつも右門に一歩先を越される
- おくに 孫太郎虫の二十三の売り子。殺された小娘と連れだって麻布へ出かけていた
- 七造 向島の闇男屋敷に仕える渡り中間
冒頭部(原文より)
1 ――その第三十番てがらです。 事の起きたのは新緑半ばの五月初め。 さみだれにかわずのおよぐ戸口かな、という句があるが、これがさみだれを通り越してつゆになったとなると、かわずが戸口に泳ぐどころのなまやさしいものではない。へそまでもかびのただようつゆの入り、というのもまんざらうそではないくらい、寝ても起きても、明けても暮れても、雨、雨、雨、雨……女房と畳を新しく替えたくなるというのもまた、このつゆのころです。
「右門捕物帖 闇男」佐々木味津三(青空文庫)
末尾部(原文より)
「だんなへ……」 「なんだよ」 「いい気性だな。あっしゃ、あっしゃ……泣けてならねえ、泣けてならねえ……」
「右門捕物帖 闇男」佐々木味津三(青空文庫)
原文を読む
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