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右門捕物帖 幽霊水(佐々木味津三)のあらすじ・登場人物

上方役者を追う夜ごとの幽霊水

  • ミステリ
  • 歴史

佐々木味津三 

文字数
21,879字
読了目安
約44分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

佐々木味津三の捕物小説「右門捕物帖」全38話の第二十三話。口数の少ない南町奉行所の同心「むっつり右門」こと近藤右門と、おしゃべりな手下の伝六が江戸の事件を解く連作。お盆を前にした真夏、伝六は亡き弟分の新盆のために、慣れない大工仕事で精霊だなをこしらえていた。そこへ現れた小柄な男が、浅草奥山の上方下りの人気役者の泊まる宿に、毎晩どこからともなく水がまかれる「幽霊水」の騒ぎを持ちこむ。江戸の役者と上方の役者の人気争いを背景に、伝六の人情と、右門のひらめきが描かれる。

あらすじ

お盆前の暑い日、亡き辰の精霊だなをこしらえる伝六のもとへ、小柄な男が訪ねてくる。浅草奥山で若衆歌舞伎を打つ上方下りの人気役者嵐三左衛門の泊まる部屋が、毎朝着物までぐっしょり水びたしになり、宿を替えても幽霊水がついて回る。三左衛門は、人気負けした隣の小屋の江戸っ子役者、水芸を得意とする江戸屋江戸五郎を疑っているという。男は、江戸五郎に囲われている東節語りの墨田舎二三春の兄で、悲しむ妹のために真相を調べてほしいと願う。右門は前夜の宿の浜町河岸の水茶屋を調べ、三左衛門の弟子から、残されていた銀のかんざしを見せられる。かんざしには江戸五郎の抱き茗荷の紋が透かしてあり、右門は惚れた男のために二三春が水をまいたとにらんで伝六を走らせる。ところが伝六は、二三春が背中を匕首で刺されて死んでいると知らせてきた。下手人は別にいて、二三春に罪を着せたうえで口を封じたのか。考えこんだ右門は、死骸のうしろの一枚刷りの絵の仕掛けに気づく。二三春は自ら匕首に身を投げ、殺されたように見せかけたのである。紙に包んだ役者の小指が残されていた。右門は奥山の舞台に踏みこみ、左手に布を巻いた三左衛門を押さえる。幽霊水は人気をあおり江戸五郎にぬれぎぬを着せるための三左衛門の自作自演で、それを探りに来た二三春を脅して手ごめにし、小指を食いちぎられていたのだった。右門は三左衛門を引き回しに付し、伝六と辰の精霊だなを仕上げに帰る。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  その二十三番てがらです。  時は真夏。それもお盆のまえです。なにしろ暑い。旧暦だからちょうど土用さなかです。だから、なおさら暑い。

「右門捕物帖 幽霊水」佐々木味津三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「生臭食ったら辰が泣くよ。だいいち、さっきの精霊だながまだでき上がっていねえじゃねえか。早くこしらえておいてやらねえと、あしたの晩やって来ても、寝るところがねえぜ」 「ちげえねえ、ちげえねえ。なるほど、それにちげえねえや。とんだ忘れ山のほととぎすだ。辰め、まごまごしやがって、上方へでも迷って出りゃたいへんだからね。おうい、かごや。きょうはおいらが身ぜにをきって乗るんだ。ぱんぱんと八丁堀まで雲に乗って飛んでいきな――」  二つの駕籠を追いかけて、江戸屋江戸五郎の小屋から、景気よく客寄せのはやし太鼓が、風に送られながら伝わりました。

「右門捕物帖 幽霊水」佐々木味津三(青空文庫)

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