愛の終り(山川方夫)のあらすじ・登場人物
コニャックを干す女の、愛の終り
- 心理
- 文字数
- 5,580字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「夏の葬列」で知られる作家・山川方夫の短編。ホテルの一室で若い男を迎える女と、その別れ。乾いた会話と鮮やかな情景で、ある関係の「終り」の瞬間を、切れ味鋭く描いた一編である。
あらすじ
ドアが開いて、流行の背広をぴったりと着込み、サングラスで顔を隠した一人の青年が入ってくる。ベッドから起き上がった彼女は、「いらっしゃい、坊や」と迎える。色白で女性的な面だち、濃い眉——青年の顔には、いかにも人工的な、不自然な微笑がうかんでいた。ホテルの一室で交わされる、乾いた会話。二人の間にあるのは、愛なのか、取引なのか、それとも惰性なのか。やがて訪れる、ある関係の「終り」の瞬間——。青年が去った部屋で、彼女はグラスに最後のコニャックを注ぎ、一息に飲み干すと、あらゆる生命を生き終えた人間のように、深々とソファに沈む。鳴りつづける電話のベルにも、彼女は身じろぎ一つしない。日が落ち、薄暗くなった部屋で、眠ったような静かなその表情が、小さな欠伸に動いた——。乾いた筆致と鮮やかな情景で、愛の終焉を切り取った、山川方夫の鋭い短編である。
冒頭部(原文より)
ドアが開くと、一人の青年が入ってきた。青年は流行のシルキイな布地の背広をぴったりと身につけ、暗緑色のサン・グラスで顔をかくしていた。そのまま、彼はすばやく室内をながめた。 彼女はゆっくりとベッドから起き上った。 「いらっしゃい、坊や」
「愛の終り」山川方夫(青空文庫)
末尾部(原文より)
彼女は、グラスに最後のコニャックを注いだ。喉を仰向けてそれを一息に飲むと、まるであらゆる生命を生き終えた人間のように、深ぶかとソファに沈み、目をつぶった。 しばらくして、電話のベルが鳴りはじめた。が、彼女は身じろぎも見せなかった。 日が落ち薄暗くなった部屋の中で、やがて、眠ったようなしずかなその表情が動いた。それは、小さな欠伸だった。
「愛の終り」山川方夫(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。