赤い蝋燭(新美南吉)のあらすじ・登場人物
花火と信じられた一本の赤い蝋燭
- 風刺
- 幻想
- 文字数
- 1,093字
- 読了目安
- 約2分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
猿が里で拾ってきた一本の赤い蝋燭を、山の獣たちが花火だと信じこむ——新美南吉の掌編。見たいけれど火はつけたくない、というみんなの心理をくじ引きで描いていくおかしみが、なんとも言えない味わいを残す。
あらすじ
山から里へ遊びにいった猿が、一本の赤い蝋燭を拾った。赤い蝋燭は珍しいものだから、猿はそれを花火だと思いこんでしまう。大事に山へ持ち帰ると、山じゅうが大騒ぎになった。鹿も猪も兎も亀も鼬も狸も狐も、花火など見たことがない。押し合いへし合い覗きこむみんなに、猿は「危い危い。そんなに近よってはいけない。爆発するから」と言い、花火がどんなに大きな音で飛び出し、どんなに美しく空にひろがるかを語って聞かせた。そんなに美しいものなら見たい——今晩、山の頂上で打ち上げようということになる。夜、みんなは胸をおどらせて頂上に集まり、猿はもう赤い蝋燭を木の枝にくくりつけて待っていた。ところが困ったことが起きる。誰も火をつけに行こうとしないのだ。花火を見るのは好きでも、火をつけに行くのは好きではなかった。そこでくじ引きとなり、最初に当たった亀は、蝋燭のそばまで来ると首が引っこんで出てこない。次の鼬は近眼で、蝋燭のまわりをきょろきょろするばかり。とうとう猪が飛び出して、勇ましく火をつけてしまった。みんなはびっくりして草むらに飛びこみ、耳を固くふさぎ、目までふさぐ。——しかし蝋燭は、ぽんともいわずに静かに燃えているばかりでした。
登場人物
- 猿 赤い蝋燭を花火だと思いこんで持ち帰る
- 亀・鼬・猪 くじで火つけ役に当たった獣たち
冒頭部(原文より)
山から里の方へ遊びにいった猿が一本の赤い蝋燭を拾いました。赤い蝋燭は沢山あるものではありません。それで猿は赤い蝋燭を花火だと思い込んでしまいました。 猿は拾った赤い蝋燭を大事に山へ持って帰りました。 山では大へんな騒になりました。何しろ花火などというものは、鹿にしても猪にしても兎にしても、亀にしても、鼬にしても、狸にしても、狐にしても、まだ一度も見たことがありません。
「赤い蝋燭」新美南吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
遂々猪が飛出しました。猪は全く勇しい獣でした。猪はほんとうにやっていって火をつけてしまいました。 みんなはびっくりして草むらに飛込み耳を固くふさぎました。耳ばかりでなく眼もふさいでしまいました。 しかし蝋燭はぽんともいわずに静かに燃えているばかりでした。
「赤い蝋燭」新美南吉(青空文庫)
原文を読む
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