秋の駕籠(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
家庭の味を出す一膳めし屋の人情
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 17,361字
- 読了目安
- 約35分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
山本周五郎が1952年(昭和27年)、「講談倶楽部」に発表した時代小説。北八丁堀の河岸で、独り者の客に「家庭的なもの」を食べさせようと、儲けを二の次に一膳めし屋を営む金助と、その娘お梅。江戸の市井に生きる人々の情を、あたたかく描いた人情ものである。
あらすじ
魚金の店は、北八丁堀の河岸にあった。一膳めしと居酒を兼ねた縄のれんだが、造作も気取っていて、いつも掃除がゆき届いた、さっぱりと洒落た店である。板場は主人の金助、店は娘のお梅が二人の小女を使ってきりもりしていた。金助はもと深川の魚屋だったが、娘が八つのとき女房に死なれ、こちらへ移ってこの商売を始めた。骨太で赫ら顔、不愛想で口の重い男だが、気のいい情に脆い性分だった。「おれは儲けるのは二の次だ」——めし屋に来る客は独り者が多く、家庭的なものに飢えている。美味いに越したことはないが、親身な家庭の味と気分こそが欲しいだろう、この魚金はそういう店にするんだ、と金助は言い、その気構えをいつまでも忘れなかった。そんな店に集う人々の、ささやかな情と暮らしを、物語はあたたかくたどっていく。物語の結び、大磯や曽我兄弟をめぐる客たちの軽口が交わされ、街道には馬の鈴が平穏に聞こえていた。江戸の市井に生きる人々の人情を、しみじみと描いた、山本の一編である。
登場人物
- 金助 一膳めし屋「魚金」の主人
- お梅 金助の娘
冒頭部(原文より)
魚金の店は北八丁堀の河岸にあった。二丁目と向き合った角で、東と南の両方から出入りができた。魚金は一膳めしと居酒を兼ねた繩のれんであるが、造作もちょっと気取っているし、いつも掃除がゆき届いていて、さっぱりとした洒落れた感じの店であった。板場のほうは主人の金助が受持ち、店は娘のお梅が二人の小女を使ってやっていた。
「秋の駕籠」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
「大磯ならどうしてあたぼうだ」 「大磯は曽我兄弟に縁のある土地だろう、とすればおめえ五りょう十りょうだ」 「この野郎」と六助が喚いた。 「ざまあみろ」と中次が笑った。街道には馬の鈴が平穏に聞えていた。
「秋の駕籠」山本周五郎(青空文庫)
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