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秋の駕籠(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

家庭の味を出す一膳めし屋の人情

  • 歴史
  • 心理

山本周五郎 1952年(昭和27年)12月 「講談倶楽部」

文字数
17,361字
読了目安
約35分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

山本周五郎が1952年(昭和27年)、「講談倶楽部」に発表した時代小説。北八丁堀の河岸で、独り者の客に「家庭的なもの」を食べさせようと、儲けを二の次に一膳めし屋を営む金助と、その娘お梅。江戸の市井に生きる人々の情を、あたたかく描いた人情ものである。

あらすじ

魚金の店は、北八丁堀の河岸にあった。一膳めしと居酒を兼ねた縄のれんだが、造作も気取っていて、いつも掃除がゆき届いた、さっぱりと洒落た店である。板場は主人の金助、店は娘のお梅が二人の小女を使ってきりもりしていた。金助はもと深川の魚屋だったが、娘が八つのとき女房に死なれ、こちらへ移ってこの商売を始めた。骨太で赫ら顔、不愛想で口の重い男だが、気のいい情に脆い性分だった。「おれは儲けるのは二の次だ」——めし屋に来る客は独り者が多く、家庭的なものに飢えている。美味いに越したことはないが、親身な家庭の味と気分こそが欲しいだろう、この魚金はそういう店にするんだ、と金助は言い、その気構えをいつまでも忘れなかった。そんな店に集う人々の、ささやかな情と暮らしを、物語はあたたかくたどっていく。物語の結び、大磯や曽我兄弟をめぐる客たちの軽口が交わされ、街道には馬の鈴が平穏に聞こえていた。江戸の市井に生きる人々の人情を、しみじみと描いた、山本の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 魚金の店は北八丁堀の河岸にあった。二丁目と向き合った角で、東と南の両方から出入りができた。魚金は一膳めしと居酒を兼ねた繩のれんであるが、造作もちょっと気取っているし、いつも掃除がゆき届いていて、さっぱりとした洒落れた感じの店であった。板場のほうは主人の金助が受持ち、店は娘のお梅が二人の小女を使ってやっていた。

「秋の駕籠」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「大磯ならどうしてあたぼうだ」 「大磯は曽我兄弟に縁のある土地だろう、とすればおめえ五りょう十りょうだ」 「この野郎」と六助が喚いた。 「ざまあみろ」と中次が笑った。街道には馬の鈴が平穏に聞えていた。

「秋の駕籠」山本周五郎(青空文庫)

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