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霰ふる(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

霰の夜に降りる二人の女

  • 幻想
  • 怪奇

泉鏡花 1912年(大正元年)11月 「太陽」

文字数
8,643字
読了目安
約17分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

1912年(大正元年)11月、雑誌「太陽」に掲載。幼いころから折にふれて、年を取らない二人の婦人の姿を見る民也が、最初にそれを見た、霰の降る冬の夜を振り返る。山国の城下町の夜更け、徹夜で勉強する二人の少年の怪談めいたおしゃべり、亡き母への思慕が、静かな怪異に重なる。

あらすじ

民也には、若いのと少し年上の二人の婦人が、思いがけず姿を見せることがある。九つか十のころに初めて見てから、三十を過ぎるまでに四、五度は確かに逢ったが、二人はいつも年を取らず、同じ顔をしている。最初は、霰の降る冬の夜更けだった。試験前の徹夜で、友達の常さんと二人、古い家の店の八畳で地誌略を読んでいた。外の闇を思って、怪物や、霰に打たれて化ける八田潟の鮒の話をするうち、民也は、母が生きていた夏の雷雨の夜、筋向かいの二階家から聞こえた異様な悲鳴のことを思い出す。蔀を開けた客は、何も見えなかったと言って蒼ざめていた。その母は昨年亡くなっていた。話が一段落して、二人が勉強に戻ろうとしたとき、二階の階段の一番上に、円髷と島田の二人の婦人が、手燭を捧げて静かに降りてきた。二人は悲鳴をあげて奥の間に逃げ込み、父と祖母は夢だと笑った。後で語り合うと、二人が見た姿は錦絵のように同じだった。それ以来、民也はこの二人を恐れず、母や祖父母の気配とともに親しく思うようになった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 この二人の婦人は、民也のためには宿世からの縁と見える。ふとした時、思いも懸けない処へ、夢のように姿を露わす―― ここで、夢のように、と云うものの、実際はそれが夢だった事もないではない。けれども、夢の方は、また……と思うだけで、取り留めもなく、すぐに陽炎の乱るる如く、記憶の裡から乱れて行く。 しかし目前、歴然とその二人を見たのは、何時になっても忘れぬ。峰を視めて、山の端に彳んだ時もあり、岸づたいに川船に乗って船頭もなしに流れて行くのを見たり、揃って、すっと抜けて、二人が床の間の柱から出て来た事もある。

「霰ふる」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 ああ山の中に葬った、母のおくつきは彼処に近い。 その松の蔭に、その後、時々二人して佇むように、民也は思った、が、母にはそうした女のつれはなかったのである。 月の冴ゆる夜は、峰に向った二階の縁の四枚の障子に、それか、あらぬか、松影射しぬ……戸袋かけて床の間へ。…… また前に言った、もの凄い暗い夜も、年経て、なつかしい人を思えば、降積る霰も、白菊。

「霰ふる」泉鏡花(青空文庫)

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