あそび(森鴎外)のあらすじ・登場人物
役所と文筆のあいだの一日
- 心理
- 文字数
- 10,340字
- 読了目安
- 約21分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
『三田文学』1910年8月号に掲載。役所勤めをしながら文筆の仕事もする官吏木村の、夏の初めの一日を描く。朝の新聞評に顔をしかめ、同僚の饒舌をやり過ごし、書類を片づけ、新聞社からの電話をかわす。何をしても「遊び」の心持でいる木村の態度に、作者自身の官吏と作家の二重生活を重ねる読み方がある。木村は『食堂』にも登場する。
あらすじ
木村は官吏であり、文学者でもある。夏の初めの朝六時に目を覚まし、女中の「本能的掃除」の音を聞きながら朝日を一本吸い、新聞の文芸欄で、木村の関わる雑誌の作品には情調がないと評されているのを読んで顔をしかめる。新聞社から審査を頼まれた応募脚本の山は、読む暇も気もなく、用箪笥の上に積んである。電車では同じ役所の小川が芸術談を持ちかけるが、木村は聞き流す。役所では、課長に赤札の書類を出して通すと、あとは書類をこつこつと片づけていく。木村は何をするにも「遊び」の心持で、同僚には笑談にしているようだと言われ、別れた妻にも茶化されていると不満を言われたことがある。昼近く、新聞社から応募脚本の催促の電話があるが、忙しいと答えて先延ばしにし、当分脚本は箪笥から降りないと思う。号砲が鳴ると、一人でゆっくり弁当を食い、汗臭い満員の電車で帰る。
登場人物
- 木村 役所勤めの官吏で、文学者でもある
- 小川 木村と同じ役所に勤める饒舌家
- 山田 木村の隣席の同僚
- 課長 法学博士。若く敏捷な人物
冒頭部(原文より)
木村は官吏である。 ある日いつもの通りに、午前六時に目を醒ました。夏の初めである。
「あそび」森鴎外(青空文庫)
末尾部(原文より)
微笑の影が木村の顔を掠めて過ぎた。そしてあの用箪笥の上から、当分脚本は降りないのだと、心の中で思った。昔の木村なら、「あれはもう見ない事にしました」なんぞと云って、電話で喧嘩を買ったのである。今は大分おとなしくなっているが、彼れの微笑の中には多少の Bosheit がある。しかしこんな、けちな悪意では、ニイチェ主義の現代人にもなられまい。 号砲が鳴った。皆が時計を出して巻く。木村も例の車掌の時計を出して巻く。同僚はもうとっくに書類を片附けていて、どやどや退出する。木村は給仕とただ二人になって、ゆっくり書類を戸棚にしまって、食堂へ行って、ゆっくり弁当を食って、それから汗臭い満員の電車に乗った。
「あそび」森鴎外(青空文庫)
原文を読む
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