バキチの仕事(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
憎めない男バキチの顛末
- 風刺
- 文字数
- 2,241字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
兵隊仲間だった男「バキチ」の変転を、知人の語りで聞き書きのように描く未完の短編。大工から巡査へ、そして職を失って馬小屋へもぐり込むまで、情けなくもどこか憎めない男の姿が、東北の口調で生き生きと語られる。賢治の童話には珍しい、世間の小さな失敗談を拾う語り口が特色で。
あらすじ
「バキチをご存じなんですか」と尋ねる男に、「兵隊で一緒でした」と答える場面から始まる。男の話では、バキチは除隊後に大工へ戻らず巡査を志願した。ところが池の鯉を見張る役目で網を持って逃げた密漁者から魚を取り上げるなど、小さな不始末を重ね、病死した牛の始末を調べに行った耕牧舎では牛に突きかかられて逃げ帰ってしまう。署長に免官を言い渡されたバキチは、わずかな衣類だけで町へ放り出され、夜中に知り合いの馬の厩へもぐり込む。馬と問答をしながら歌をうたっているところへ、語り手が通りかかり、お前は馬を盗む気か、それとも泊めてほしいのか、とたずねる。バキチは頭を掻き、どちらでもあるが、まず何か食べたいのだと答える。原稿はそこで空白になる。
冒頭部(原文より)
「ああそうですか、バキチをご存じなんですか。」 「知ってますとも、知ってますよ。」 「バキチをご存じなんですか。 小学校でご一緒ですか、中学校でご一緒ですか。いいやあいつは中学校なんど入りやしない。やっぱり小学校ですか。」「兵隊で一緒です。」
「バキチの仕事」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
(誰でもないよ、バキチだよ、もと巡査だよ、知らんかい。)バキチが横木の下の所で腹這いのまま云いました。(さあ、知らないよ、バキチだなんて。おれは一向知らないよ。)と馬が云いました。」「馬がそう云ったんですか。」「馬がそう云ったそうですよ。わっしゃ馬から聞きやした。(おい、情けないこと云うじゃないか、おいらはひどく餓えてんだ。ちっとオートでも振る舞えよ。)ところがタスケの馬も馬でさあ、面白がってオペラのようにふしをつけて(なかなかやれないわたしのオート。)だなんてやったもんです。バキチもそこはのんきです。やっぱりふしをつけながら、(お呉れよ、お呉れよ、お前のオートわたしにお呉れよ。)とうなっていました。そこへ丁度わたしが通りかかりました。おい、おい、バキチ、あんまりみっともないざまはよせよ。一体馬を盗もうってのか。 それとも宿がなくなって今夜一晩とめてもらいたいと云うのか。バキチが頭を掻きやした。いやどっちもだ、けれども馬を盗むよりとまるよりまず第一に、おれは何かが食いたいんだ。〔以下原稿空白〕
「バキチの仕事」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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