のろまのハンス(アンデルセン)のあらすじ・登場人物
ばかにされた子の大逆転
- 風刺
- 翻訳
- 文字数
- 4,528字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
アンデルセンが1855年に発表した童話(原題「Klods-Hans」)を、矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『人魚の姫 アンデルセン童話集Ⅰ』。青空文庫の表題には副題「むかしばなしの再話」が付く)。お姫さまの婿選びに出かける三人兄弟のうち、物知りの兄二人よりも、のろまと呼ばれる末っ子ハンスのほうが、お姫さまの心をつかむという筋。知識自慢の兄たちと、ありのままに受け答えするハンスの対比が笑いを生む。民話の型を借りつつ、新聞や知識人への皮肉を忍ばせた軽快な話である。
あらすじ
古い屋敷の地主の息子のうち、上の二人はおりこうで、お姫さまの婿選びに出かけようとする。一人はラテン語の辞書と新聞をそらで覚え、もう一人は組合の規則に通じていた。三番目の息子ハンスは、のろまと呼ばれて兄弟に数えられていなかったが、ヤギに乗って自分も出かける。途中で死んだカラス、古い木靴、どぶのどろを拾い、お姫さまへの贈り物にするという。兄たちは、町に着くと広間の暑さと書記たちの前で舌がまわらなくなり、「おさがり」と言われる。ハンスはヤギに乗ったまま部屋に入り、暑さの理由を聞いて、カラスを焼いてほしいと頼み、木靴を鍋に、どろをソースにして見せる。お姫さまは、返事ができるハンスを夫に選び、書記長の顔にどろを投げつけたハンスに感心する。こうしてハンスは王さまになったというが、書記長の新聞で見たことなので、あてにはできないと語り手は結ぶ。
登場人物
- のろまのハンス 兄弟に数えられていない末っ子。ヤギに乗って出かける
- 上の兄 辞書と新聞をそらで覚えている
- 下の兄 組合の規則に通じ、刺しゅうもできる
- お姫さま 話のじょうずな者を婿にすると宣言する
- 書記たち 広間の窓で、話を残らず書き取る
冒頭部(原文より)
あるいなかに、古いお屋敷がありました。そのお屋敷には、年をとった地主が住んでいました。地主にはふたりの息子がありましたが、ふたりとも、ものすごくおりこうで、その半分でもたくさんなくらいでした。ふたりは、王さまのお姫さまに結婚を申しこもうと思いました。どうしてそんなことを考えたかというと、じつは、こうなのです。お姫さまは、だれよりもじょうずにお話のできる人をお婿さんにする、と、国じゅうにふれまわらせていたからです。 そこで、ふたりは、一週間のあいだ、いろいろと準備をしました。つまり、それだけしか、ひまがなかったのです。でも、それだけあればたくさんでした。なぜって、ふたりには予備知識というものがあったからです。しかも、この予備知識というものは、いつでも役に立つものなのです。ひとりは、ラテン語の辞書を全部と、町の新聞を三年分、すっかり、そらでおぼえていました。おまけにそれが、前からでも後からでも、自由じざいだったのです。もうひとりは、組合の規則を残らずおぼえていて、組合長ならだれでも知っていなければならないことを、ちゃんと心得ていました。ですから、政治のことなら、だれとでも話すことができるつもりでいました。それに、じょうひんで、手先も器用でしたから、ウマのひきがわにししゅうをすることもできました。
「のろまのハンス」アンデルセン(青空文庫)
末尾部(原文より)
「まあ、すてき!」と、お姫さまが言いました。「とてもそんなこと、あたしにはできないわ! でも、そのうちに習いましょう」―― こうして、のろまのハンスは王さまになりました。お姫さまをお妃さまにして、王冠をかぶって、玉座についたのです。ただ、これは、書記長の新聞から見てきたことなんですよ。――ですから、あんまりあてにはできませんがね。
「のろまのハンス」アンデルセン(青空文庫)
原文を読む
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