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番町皿屋敷(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

幽霊の出ない皿屋敷

  • 恋愛

岡本綺堂 1916年(大正5年)1月

文字数
11,953字
読了目安
約24分
表記
新字旧仮名
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂の戯曲で、1916年(大正5)2月に東京の本郷座で初演された。主演は二代目市川左団次の青山播磨と、二代目市川松蔦のお菊。古くから伝わる皿屋敷の怪談を下敷きにしながら、お菊の亡霊を出さず、旗本の青山播磨と腰元お菊の恋を軸にした人間の物語に作り替えた。近代人にも通じる心理劇にした新歌舞伎の代表作で、現在も上演されている。

あらすじ

明暦のはじめ、江戸。白柄組に加わって喧嘩に明け暮れる旗本・青山播磨は、伯母の真弓から身の固めを勧められるが、縁談を渋る。播磨には、腰元のお菊という相思の恋人があったのだ。だがお菊は、播磨に他家から奥方を迎える縁談があるという噂に胸を苛まれ、その愛の真偽を確かめようと、割れば手討という青山家重代の高麗の皿を、わざと一枚打ち砕く。はじめ粗相として不問に付した播磨だったが、お菊が故意に割ったこと、しかもそれが自分の心を試すためだったと知り、激昂する。皿が惜しいのではない――偽りなく一途に思い詰めた真心を疑われたことが、播磨には耐えがたかった。彼は皿など惜しくないと、残りの皿を自ら次々と叩き割ってみせる。それでもなお、真実の恋を疑われた無念は晴れぬと、詫びるお菊を庭へ引き据え、一刀のもとに斬り伏せて井戸へ投げ込ませる。家宝も砕け、一生の恋も滅びた播磨は、伯母の勘当も辞さず、喧嘩商売に身を持ち崩すべく槍を取って夜の町へ駆け出してゆくのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

播磨 桜はよく咲いたな。 權次 まるで作り物のやうでござりまする。 權六 たなばたの赤い色紙を引裂いて、そこらへ一度に吹き付けたら、斯うもあらうかと思はれまする。 播磨 はて、むづかしいことを云ふ奴ぢや。それより一口に、祭礼の軒飾りのやうぢやと云へ。はゝゝゝゝゝ。

「番町皿屋敷」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

播磨 家重代の宝も砕けた。播磨が一生の恋もほろびた。 權六 申上げます。水野十郎左衞門様これへお越しの途中で町奴どもに道を遮られ、相手は大勢、なにか彼やと云ひがかり、喧嘩の花が咲きさうでござりまする。 權次 むゝ、そんならまだ先刻の奴等が、そこらにうろついてゐたと見えるな。 播磨 よし、播磨がすぐに駈け付けて、町奴どもを追ひ散らしてくれるわ。 十太夫 殿様。又しても喧嘩沙汰は……。 播磨 やめいと申すか。一生の恋をうしなうて……。あたら男一匹がこれからは何をして生くる身ぞ。伯母御の御勘当受けうとまゝよ。八百八町を暴れあるいて、毎日毎晩喧嘩商売。その手はじめに……。奴。まゐれ。 (播磨は足袋はだしのまゝに走りゆく。權次權六も身づくろひして後につゞく。十太夫はあとを見送る。) ――幕――

「番町皿屋敷」岡本綺堂(青空文庫)

名文

もし偽りの恋であつたら、播磨もそちを殺しはせぬ。いつはりならぬ恋を疑はれ、重代の宝を打割つてまで試されては、どうでも赦すことは相成らぬ。

綺堂『番町皿屋敷』で、皿を割って自分の心を試したお菊に、青山播磨が言い渡す言葉。皿惜しさではなく、恋を疑われた怒りが手討ちの理由だと明かされる。

家重代の宝も砕けた。播磨が一生の恋もほろびた。

お菊を井戸に沈めたあと、井戸をのぞいた播磨のつぶやき。亡霊の出ない皿屋敷が、恋を自ら断った男の悲劇として結ばれる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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