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薔薇夫人(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

生前未発表の未完の断章

  • ミステリ

江戸川乱歩 1936年(昭和11年)

文字数
8,971字
読了目安
約18分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

江戸川乱歩が生前に発表しなかった未定稿。伯父の金を盗んで放蕩の果てに世をはかなむ二十一歳の青年・青山浩一を主人公に、退廃と犯罪の気配ただよう物語が幕を開けるが、書きさしのまま中断されている。のちに乱歩がこの書き出しを流用して、複数の作家によるリレー小説「女妖」へと発展させたことでも知られる、興味深い断章である。

あらすじ

旧浜離宮の公園の芝生に腰をおろし、停泊する汽船をぼんやりと眺める青年・青山浩一。伯父のへそくり五万円を盗み出し、温泉から温泉へと泊まり歩いて使い果たした彼の懐には、もはや今夜の宿代ほどしか残っていない。伯父の家にも勤め先にも帰る気はなく、二十一歳の彼は「生きるに甲斐なき世界」と、死をさえ思いつめている。そんな彼の前に、やがて謎めいた事件と人物の影が忍び寄る——。物語は、スミエという女性をめぐる緊迫した場面へと進んでいくが、そこで筆は途切れる。生前は世に出ることのなかったこの未定稿は、退廃した青年の心理と犯罪の予感を濃密に漂わせたまま、「未完」の二文字で閉じられている。乱歩はのちに、この印象的な書き出しを、他の作家との連作リレー小説「女妖」へと流用した。作家の創作の舞台裏をのぞかせる、貴重な断章である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 青山浩一は、もと浜離宮であった公園の、海に面する芝生に腰をおろして、そこに停泊している幾つかの汽船を、ボンヤリと眺めていた。うしろに真赤な巨大な太陽があった。あたりは見る見る夕暮の色をおびて行った。ウイーク・デイのせいか。ときたま若い二人づれが通りかかるほかには、全く人けがなかった。  伯父のへそくりを盗み出した五万円は、十日間の旅行で遣いはたしてしまった。ポケットには、辛うじて今夜の家賃に足りるほどの金が残っているばかりだ。

「薔薇夫人」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

「スミエさん、ぼくです」  今度は少し大きい声を出した。 (未完)

「薔薇夫人」江戸川乱歩(青空文庫)

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