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青君の追跡(チェスタトン)のあらすじ・登場人物

桟橋をめぐる二つの横顔

  • ミステリ
  • 翻訳

チェスタトン 訳者 村崎敏郎 1957年(昭和32年)3月

文字数
18,974字
読了目安
約38分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

G・K・チェスタトンのブラウン神父ものの一編。原題は「The Pursuit of Mr. Blue」。イギリスの海辺の行楽地で、百万長者の護衛を引き受けながら桟橋の小屋に閉じ込められ、窓の外で追う男と追われる男が回るのを見ているしかなかった私立探偵マグルトンが、子どもと浜で遊んでいたブラウン神父に相談をもちかける。大道芸人や浜の説教者がにぎわう遊歩場、一ペニーで動く自動人形の追いかけっこなど、行楽地の風物がそのまま謎の道具立てになっている。目撃談の一つ一つの描写を神父が読み替えていく推理の運びが読みどころ。原作は短編集『ブラウン神父の醜聞』(1935年)に収められたシリーズ最後期の一編で、村崎敏郎の訳は1957年に早川書房のハヤカワ・ポケット・ミステリから刊行された同書の翻訳による。

あらすじ

海辺の行楽地で、気の滅入るような名の私立探偵マグルトンは失敗に沈んでいた。百万長者ブレアム・ブルースから、自分をつけ狙ういとこの役者崩れバートランドがいるので桟橋の先の小屋で会いたいと、週五ポンドで雇われた。ところが小屋に入ると外から錠をかけられ、丸窓の外を、外套に毛皮の襟の威厳ある紳士と、背を丸め赤いスカーフを巻いて拳銃を握った無精ひげの男が、追いつ追われつ何度も回るのを見せられる。やがて足音が絶え、銃声と水音がした。だが翌朝、桟橋の門から犯人らしい男が出た形跡はなく、警察も行方をつかめない。警部の勧めで、浜で子どもと遊ぶブラウン神父に相談したマグルトンは、浜の説教者ブリムストン爺さんが「死んだ肉体を漁している」と口走ったことを聞かされる。秘書テイラーはマグルトンの作り話を疑い、スカーフの男を出してみせろと神父に迫るが、神父が指した老人の網から、赤いスカーフの大男の死体が引き揚げられた。人々はマグルトンの話が証明されたと考えるが、神父は真相が逆だと明かす。死体は百万長者ブルース本人だった。追われることに怯えたブルースは身なりもかまわず身を隠し、ひげも剃らずにいた。威厳ある物腰と毛皮の外套の紳士こそ役者のいとこで、落ち着き払っていたのは殺す決心がついていたからであり、拳銃を握ってきょろきょろしていたのは後ろを気にする被害者の方だった。二人は円を描いて回っていたので、先に見た方を追われる者と思い込んだにすぎない。神父は、どちらが先に走り出したかで見え方の変わる自動人形の青君と赤君の追いかけっこでそれを説明する。紳士の姿の犯人は誰にも怪しまれずに桟橋を出ていたのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 よく晴れた午後の海辺の遊歩場を、マグルトン(だまされやすいアホウ者という意味)という気のめいるような名前の持主がその名にふさわしく憂欝そうに歩いていた。額には深い苦労のしわが馬蹄形にきざまれていた。そこで脚下の浜辺にちらばつてならんでいる大道芸人の群れがいくらそつちを見上げても喝采してもらえなかつた。ピエロ連中が、死んだ魚の真白な腹のように青白い、顔を上げてみせても、いつこうにこの男の元気はよくならなかつた。きたないすすで顔をすつかりねずみ色にしている黒人連中もやはり同じようにこの男の気分を明るくしてやるわけにはいかなかつた。失望した悲しい男であつた。深いしわのきざまれている禿げあがつた額以外もオドオドしてやつれたような感じだつた。そしてなんとなく陰気だが上品な顔立ちだけに、顔の中で唯一のこれ見よがしの装飾物がなおさら不似合いな感じだつた。それはピンと飛び出して逆立つている軍隊風の口ひげで、つけひげではないかと疑われそうなものであつた。実際、つけひげだという可能性もある。一方、もしつけひげでないとしても、無理にはやしたものだという可能性もある。単に自分の意思で、大急ぎではやしたのかもしれなかつた……それくらいその口ひげは、この男の個性の一部というより、むしろ仕事の一部だつたのである。

「青君の追跡」チェスタトン(青空文庫)

末尾部(原文より)

とこしえに飛びて躍れや、われは青からむ」

「青君の追跡」チェスタトン(青空文庫)

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