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ブタ飼い(アンデルセン)のあらすじ・登場人物

つぼと鈴とキスの値段

  • 風刺
  • 翻訳

アンデルセン 訳者 矢崎源九郎 

文字数
5,703字
読了目安
約11分
表記
新字新仮名

この作品について

アンデルセンが1841年12月に発表した童話(原題 Svinedrengen)を、北欧文学者の矢崎源九郎が訳したもの(新潮文庫『マッチ売りの少女 アンデルセン童話集Ⅲ』)。貧しい王子が皇帝の姫に求婚するが、本物のバラやナイチンゲールの値打ちが分からない姫に退けられる。王子が身をやつして姫のもとへ潜りこむ筋で、姫の俗っぽさをからかった風刺とユーモアが前面に出ている。姫と侍女たちのやりとりの軽妙さと、結末のほろ苦さが読みどころ。

あらすじ

貧しいが名の知れた小国の王子が、皇帝の姫に求婚するため、父の墓に咲くバラと、美しい声のナイチンゲールを贈る。しかし姫は、造りものでない本物の花に泣きそうになり、鳥は本物なのでいやだと言って、王子を追い払う。王子は顔を汚してブタ飼いになり、御殿で働く。王子が作った、湯気で町じゅうの台所の料理が分かる、鈴つきのつぼを、姫はキス十回と引き換えに手に入れる。次に、あらゆる曲を鳴らせるガラガラを、キス百回の約束で買おうとし、侍女たちに囲ませてキスを重ねる。そこへ皇帝が来て、八十六回目のキスを見つけ、姫とブタ飼いを国から追い出す。雨の中で姫は、あの美しい王子を迎えておけばよかったと嘆く。そのとき、ブタ飼いは本来の王子の姿に戻り、バラとナイチンゲールの値打ちが分からず、おもちゃのためにブタ飼いにキスをするなど、おまえをさげすまずにはいられないと言い放つ。王子は自分の国へ帰って門を閉ざし、姫は門の外で「ああ、いとしいアウグスチン」と歌うしかなかった。

冒頭部(原文より)

 むかしむかし、ひとりの貧しい王子がいました。王子は一つの国をもっていましたが、それはとても小さな国でした。でも、いくら小さいとはいっても、お妃をむかえるのに、ふそくなほどではありませんでした。さて、この王子はお妃をむかえたいと思いました。  それにしても、この王子が皇帝のお姫さまにむかって、「わたくしと結婚してくださいませんか?」などと言うのは、あまりむてっぽうすぎるというものでした。けれども、王子は、思いきって、そうしてみました。なぜって、王子の名前は遠くまで知れわたっていましたし、それに、王子が結婚を申しこめば、よろこんで、はい、と、言いそうなお姫さまは、何百人もいたからです。ところで皇帝のお姫さまは、はい、と、言ったでしょうか?

「ブタ飼い」アンデルセン(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ぼくは、あなたをさげすまずにはいられません!」と、王子は言いました。「あなたは、りっぱな王子をむかえようとはなさらなかった! バラの花やナイチンゲールの、ほんとうのねうちも、あなたにはおわかりにならなかった! それなのに、おもちゃなんかのためには、ブタ飼いにまでもキスをなさる! さあ、いまこそ、あなたは、そのばつをお受けになったのです!――」  こう言うと、王子は、自分の国へ帰って、門をしめ、かんぬきをさしてしまいました。ですから、今度は、お姫さまが門の外に立って、うたいました。 ああ、いとしいアウグスチン、 もうおしまいよ、なにもかも!

「ブタ飼い」アンデルセン(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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