智恵の一太郎(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
なぜとどうすれば
- ミステリ
- 青春
- 文字数
- 67,341字
- 読了目安
- 約2時間15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
戦時中の「少年倶楽部」に1942年1月号から連載された、少年向けの科学の謎解き連作。「智恵の一太郎」と呼ばれる小学生の明石一太郎が、身近な不思議を、頓智ではなく筋道を立てて考え抜き、「なぜ」と「どうすれば」で解いていく。池の中のまり、雪に消えた足跡、水から火を作る謎など、日常の題材がそのまま理科の入口になる。最後の章は、時代を映した工場見学記になっている。
あらすじ
明石一太郎は小学校六年生。「なぜ」と「どうすれば」を考え抜く少年で、友人たちから「智恵の一太郎」と呼ばれている。第一話では、球が池に落ちて棒もなく取れずに困った友人の前で、動物園の象が鼻息で煎餅を引き寄せるのを思い出し、石を投げて水の波で木ぎれを岸へ寄せてみせる。以後、雪の日に足跡が消えた謎、お椀の水で火をつける謎、月の大きさの見え方、風に吹かれるとなぜ寒いのかといった問題が、近所の大学生の高橋さんや伯父さん、お父さんから次々に出され、一太郎は筋道を立てて答えていく。針の穴を眼鏡の代わりにする工夫や、光る虫を使った明かりなど、身近なものを使った実験も登場する。各話は、謎の提示、一太郎の推理、種明かしの順に進み、答えが分かる場面で理科の知識に結びつく。最後の章は、航空本部の小父さんに連れられた一太郎が、飛行機の材料を作るアルミニウム工場や銅山、工作機械の工場を見学する見学記で、戦時下の少年向け読み物らしい調子で終わる。
登場人物
- 明石一太郎 「智恵の一太郎」と呼ばれる小学六年生
- 高橋一郎 近所の少年たちに人気のある大学生
- 木村良雄 一太郎の友人
- 一太郎の伯父さん 謎を出して一太郎を試す
冒頭部(原文より)
象の鼻 明石一太郎君は、学校のお友だちや近所の人から、「智恵の一太郎」というあだなをつけられていました。それは、一太郎君がとても、うまい考を出して、みんなをびっくりさせたことが、いくどもあったからです。 近所のおばさんなんかは、一太郎君を「頓智がうまい」といってほめましたが、一太郎君の智恵はただの頓智ではなくて、何でもすじみちを立てて、よく考えてみるという智恵なのです。「なぜ」ということと「どうすれば」ということを、ほかの子供たちよりも、ずっとよけいに考える気質だったのです。
「智恵の一太郎」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
小父さんはそういって、さも愉快そうにお笑いになった。僕もなんだかうれしくて、胸がすーっとした。 こんどの工場見学はほんとうに愉快だった。日本国民全体が戦争をしているのだということが、よくわかった。精機工場で、僕と同じくらいに見えるかわいらしい少年工員が、大きな機械を一人で楽しそうに動かしているのを見た時には、なんだかはずかしいような、うらやましいような気がした。僕はもっと勉強をしなければならない。また運動をしてからだをきたえなければならない。うっかりしていると、あのかわいらしい少年工員に笑われる。
「智恵の一太郎」江戸川乱歩(青空文庫)
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