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小さい太郎の悲しみ(新美南吉)のあらすじ・登場人物

かぶと虫を手に友だちをたずねて

  • 心理

新美南吉 1943年(昭和18年)9月

文字数
3,485字
読了目安
約7分
表記
新字新仮名

この作品について

新美南吉の童話。青空文庫の図書カードによれば「小さい太郎の悲しみ」は執筆時の題で、「かぶと虫」と改められ、作者の死の直後の1943年(昭和18)9月に刊行された童話集『牛をつないだ椿の木』に収められた。兄弟のいない小さい太郎は、お花畑から飛び立ったかぶと虫を篩でつかまえるが、縁側のおばあさんは相手にしてくれない。かぶと虫の面白い遊び方を知っている誰かを求めて、太郎は虫を糸にぶら下げ、村の友だちの家を一軒ずつ訪ねていく。昼下がりの静かな村を歩く子どもの心の動きを、短い章でたどった作品。

あらすじ

ひとりっ子の小さい太郎は、お花畑から飛び立ったかぶと虫を篩でつかまえる。縁側で居眠りしていたおばあさんは「がにか」と言うばかりで相手にしてくれない。太郎はかぶと虫の面白い遊び方を知っている誰かを探しに出かける。金平ちゃんはお腹をこわして寝ていたが、明日になれば治るだろう。一つ年上の恭一君は三河の親類にあずけられていたが、盆と正月には帰ってくるという。最後に、草の葉で笛を鳴らし、どんなものでもおもちゃにしてしまう車大工の安雄さんを訪ねる。安雄さんはおじさんとかんなの刃を研いでいて、おじさんは、安雄は今日から一人前の大人になったので子どもとは遊ばないと突き放す。安雄さんはしかたなさそうにかすかに笑い、また仕事に目を戻した。大人の世界に入った人はもう子どもの世界に帰ってこないと知った太郎の胸に、泣いても消すことのできない悲しみが広がる。太郎は西の山の上の縁の赤い雲をいつまでも見つめ、かぶと虫が指から逃げたのにも気づかない。

登場人物

冒頭部(原文より)

 お花畑から、大きな虫がいっぴき、ぶうんと空にのぼりはじめました。  からだが重いのか、ゆっくりのぼりはじめました。  地面から一メートルぐらいのぼると、横にとびはじめました。  やはり、からだが重いので、ゆっくりいきます。うまやの角の方へのろのろとゆきます。  みていた小さい太郎は、縁側からとびおりました。そしてはだしのまま、篩をもって追っかけてゆきました。

「小さい太郎の悲しみ」新美南吉(青空文庫)

末尾部(原文より)

 もう、ここにはなんにものぞみがのこされていませんでした。小さい太郎の胸には悲しみが空のようにひろくふかくうつろにひろがりました。  ある悲しみはなくことができます。ないて消すことができます。  しかしある悲しみはなくことができません。ないたって、どうしたって消すことはできないのです。いま、小さい太郎の胸にひろがった悲しみはなくことのできない悲しみでした。  そこで小さい太郎は、西の山の上に一つきり、ぽかんとある、ふちの赤い雲を、まぶしいものをみるように、眉をすこししかめながら長いあいだみているだけでした。かぶと虫がいつか指からすりぬけて、にげてしまったのにも気づかないで――

「小さい太郎の悲しみ」新美南吉(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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