台川(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
生徒と歩く渓流の地質実習
- 青春
- 文字数
- 7,703字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 岩手県
この作品について
教師の「おれ」が生徒たちを連れて、釜淵へ地質の野外実習に出かける一日を描く短編。生徒に向けた説明を〔 〕の中に、頭の中のつぶやきを地の文に置く二重の書き方で、黒曜石の岩脈、流紋凝灰岩、壺穴、温泉の作用でできた玻璃蛋白石の脈など、地質学の用語が実習の流れとともに出てくる。方言で話しかける生徒たちの様子、飛び石を並べ、水を渡る場面など、渓流歩きの感覚が光と水の描写で書かれる。
あらすじ
「もうでかけましょう」と声をかけ、おれは生徒たちを連れて釜淵まで歩き出す。校長は寄宿舎の前で待っている。粘土の道、小松と林の中で、おれは向こうの崖の黒い岩が黒曜石の岩脈だと教え、山が流紋凝灰岩でできているため杉が育たず、麓の古い沖積扇には立派な広葉樹が茂ることなどを説明する。説明が混乱しないよう言うべきこと、言わないでおくことを考えるのも一仕事だ。松や小松の林、巨礫を過ぎ、道がわからなくなると、けわしい崖をおりて渓へ下りる。下りすぎて滝までの道がないので、おれは靴を脱ぎ、飛び石を拵えて生徒たちを渡らせる。滝を登って平らな流れを溯り、凝灰岩の赤い変質は温泉が裂け目を通ったためだと説明し、壺穴の標本や、裂け目に沈んだ玻璃蛋白石の脈を、ハンマーで取って見せる。崖の上から河童捕りをしていた生徒が駆け下りてきて、鞄をぬらしたと言う。おれは、水の流れるところを歩くようにと生徒たちに教えて、帰りは川を下り、いい気持ちだと思う。
冒頭部(原文より)
〔もうでかけましょう。〕たしかに光がうごいてみんな立ちあがる。腰をおろしたみじかい草。かげろうか何かゆれている。かげろうじゃない。網膜が感じただけのその光だ。
「台川」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
もうみんなおりる。おれもおりる。たった一人あとからやって来る人がある。こわそうだ。 〔水の流れるところをあるくんです。水の流れる所を歩くんですよ。〕 そうだ。そうだ。いい気持ちだ。
「台川」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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