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電人M(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

火星人と電人Mの謎

  • ミステリ
  • 冒険

江戸川乱歩 1960年(昭和35年)1月 「少年」

文字数
78,329字
読了目安
約2時間37分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

江戸川乱歩が光文社の月刊誌「少年」に1960年(昭和35)の1年間連載した、少年探偵団ものの長編。望遠鏡の先にあらわれる火星人、逆さまに歩くロボット、「月世界旅行をしましょう」と書かれた不思議な紙切れ。はじめはSFめいた怪事件だが、やがて科学者の大発明をめぐる怪人二十面相との攻防へつながっていく。ロボットや人工の月世界、秘密の地下通路など、科学を取り入れた趣向が詰まっている。

あらすじ

少年探偵団員の中村君たち三人が屋根の上の望遠鏡をのぞくと、タコ入道のような火星人が現れ、紙切れを残して消える。紙には「月世界旅行をしましょう」とだけ印刷されていた。その後、東京にはさかさまに歩くロボットも現れ、そのたびに同じような紙切れが残される。やがて練馬区の畑には、人工の大月世界が出現し、新聞に大広告が出て見世物になる。一方、豊島区の化学者・遠藤博士の邸では、鉄のからだに透明な顔、赤い目をもつ巨大な怪人「電人M」が庭にあらわれ、研究室から博士の大発明をねらう。小林少年とポケット小僧は電人Mを追って青い自動車を尾行するが、ガレージの中で人が消えてしまう。事件をひきうけた明智探偵は、博士邸でひそかに調べを進め、秘密の箱や天井の目といった怪しい細工を暴く。電人Mの正体と、博士の助手・木村の正体は、いずれも怪人二十面相だった。二十面相は警官に囲まれても動じず、奥の手の黒い怪鳥を使って空に飛び去り、博士の息子の治郎少年をさらう。小林少年とポケット小僧は、窓のない地下の部屋、動く床の廊下、巨大な機械室と、二十面相の本拠に潜入して、月世界の見世物の下に隠された秘密を探る。最後は、警察や少年探偵団の総勢が月世界を包囲して二十面相の計画を打ち砕き、遠藤博士は発明の秘密を永遠に封じると決意する。

登場人物

冒頭部(原文より)

 少年探偵団員で、中学一年の中村君と、有田君と、長島君の三人は、大のなかよしでした。  ある午後のこと、有田君と長島君が、中村君の家に、遊びにきていました。  中村君の家は港区のやしき町にある、広い洋館で、その二階の屋根の上に、三メートル四方ほどの、塔のような部屋がついていました。その部屋だけが三階になっているわけです。  中村君は星を見るのがすきで、その塔の部屋に、そうとう倍率の高い天体地上望遠鏡がそなえてありました。

「電人M」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 明智探偵が、心の底を見ぬこうとするような、するどい目で、遠藤博士を見つめました。 「滅ぼします。」 「えっ、滅ぼすとは?」 「仮死粒子の原理を滅ぼすのです。わたしの頭の中の墓場にうずめてしまうのです。いま、それを決心しました。ある国が、この仮死粒子を手にいれたら、世界は思うままになります。しかし、その国がかならずよい政治をするとはかぎりません。人間の心には悪があるからです。たとえ日本のためにでも、わたしはこの秘密を、打ち明けないことを、かたく決心しました。  わたしが死ぬまでは、わたしの頭の中の墓場へ、そして、わたしが死ねば、この秘密は永遠の秘密となるのです。」  遠藤博士は、そう言って、よく晴れた朝の青空をみあげました。そのおだやかな顔には、聖者のようなにこやかな笑いが、ただよっているのでした。

「電人M」江戸川乱歩(青空文庫)

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