毒蛾(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
毒蛾騒ぎの町を行く
- 風刺
- 文字数
- 6,545字
- 読了目安
- 約13分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
宮沢賢治の童話。文部局の巡回視学官の「私」が、イーハトブ地方への出張で、毒蛾が大発生したという町々を見て歩く。ホテルの給仕、床屋のアーティストたち、夜通したかれる焚き火と町の人々の騒ぎようがおかしく描かれ、最後に意外な落ちがつく。賢治のユーモアと風刺が効いた一編。
あらすじ
巡回視学官の「私」は、イーハトブ地方の出張から帰ったばかりで、旅先で見た毒蛾の話を始める。首都マリオのホテルでは窓が閉め切られ、町には焚き火の跡が並び、柳に石油ランプが下がり、包帯をした人が歩いている。床屋では、ひげを片方だけそった紳士が毒蛾に刺されたと騒ぎ、親方とアンモニアの効き目をめぐって言い争う。夜になると電灯が消され、ガラス戸の向こうで毒蛾を殺す火が焚かれ、通りでは撃剣の先生がほかの灯りも消せと触れて歩く。翌朝の新聞は毒蛾の記事であふれている。「私」は十里南のハームキヤの町へ向かうが、そこでは同じように灯りを消して焚き火をしているのに、被害者がひとりも見当たらない。大学校の教授たちは顕微鏡で毒蛾の鱗粉を調べており、「私」が被害を尋ねると、一人の教授は、毒蛾などこの町には発生していない、昨夜一匹見つけるのに四時間かかったと答える。「私」は大声で笑う。
登場人物
- 私 文部局の巡回視学官。語り手
- 床屋の親方とアーティストたち マリオの理髪師
- 競馬会の紳士 毒蛾に刺されたと騒ぐ客
- コワック大学校の教授たち 毒蛾の鱗粉を調べる
冒頭部(原文より)
私は今日のひるすぎ、イーハトブ地方への出張から帰ったばかりです。私は文部局の巡回視学官ですから、どうしても始終出張ばかりしてゐます。私が行くと、どこの学校でも、先生も生徒も、大へん緊張します。 さて、今度のイーハトブの旅行中で、私は大へんめづらしいものを見ました。新聞にも盛んに出てゐましたが、あの毒蛾です、あれが実にひどくあの地方に発生したのです。
「毒蛾」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いや、ありがたう。大へんないゝものを拝見しました。どうです。学校にも大分被害者があったでせう。」私は云ひました。 「いゝえ。なあに、毒蛾なんて、てんでこの町には発生なかったんです。昨夜、こいつ一疋見つけるのに、四時間もかかったのです。」 一人の教授が答へました。 そして私は大声に笑ったのです。
「毒蛾」宮沢賢治(青空文庫)
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