アプリで読む

無料・登録不要

覆面の舞踏者(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

暗闇の仮面舞踏会の錯誤

  • ミステリ
  • 恋愛

江戸川乱歩 1926年(昭和元年)1月 「婦人の国」

文字数
14,832字
読了目安
約30分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

「婦人の国」1926年1〜2月号に連載された短編。刺激を求める金持ちの男たちが集う秘密の会「二十日会」が催す、覆面の仮面舞踏会が舞台。暗闇の中で相手を知らぬまま踊った語り手が、夜が明けてから思いがけない事態に気づく。語り手の告白体で、艶笑的な趣向のうえに疑心を重ねていく。

あらすじ

語り手の「私」は友人の井上次郎に誘われ、あらゆる遊びに飽きた上流の男たちが集う秘密の会「二十日会」に入会する。会長格の呉服屋の主人、井関が企画した五回目の催しは、会員と同じ数の婦人を招き、互いに素顔を知らないまま組になって踊る覆面の仮面舞踏会だった。番号札で組を決め、広間は暗闇となり、「私」は見覚えがあるような覆面の婦人と踊り、酒に酔って乱れる。翌朝、見知らぬ家で目覚めた「私」は、枕元に友人井上の妻、春子の置き手紙を見つける。相手は春子だったのだ。悔恨に沈む「私」は、井関が似た女を用意したのではと考え直し、仕返しのつもりで井関の家を訪れるが、会員たちの話から、各自が自分の妻と踊っていたと知る。番号札を見ると、「私」は十七番を十一番と読み違えていた。井上もまた番号を誤り、「私」の妻と組んだに違いない。「私」は妻に対しても井上に対しても、唾棄すべき感情を抱えて立ちつくす。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  私がその不思議なクラブの存在を知ったのは、私の友人の井上次郎によってでありました。井上次郎という男は、世間にはそうした男が間々あるものですが、妙に、いろいろな暗黒面に通じていて、例えば、どこそこの女優なら、どこそこの家へ行けば話がつくとか、オブシーン・ピクチュアを見せる遊廓はどこそこにあるとか、東京に於ける第一流の賭場は、どこそこの外人街にあるとか、その外、私達の好奇心を満足させるような、種々様々の知識を極めて豊富に持合せているのでした。その井上次郎が、ある日のこと、私の家へやって来て、さて改まって云うことには、

「覆面の舞踏者」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 井上次郎と私の妻とのことは、私自身の場合に引比べて、推察に難くありません。私の変装については、妻は少しも知らないのですし、彼等も亦、私同様、狂者のように酔っぱらっていたのですから。そして、何よりの証拠は、一間にとじ籠って、私に顔を見せようともせぬ、妻のそぶりです。もう疑う所はありません。  私はじっと書斎に立ちつくしていました。私には最早ものを考える力もありませんでした。ただ、焼きつくように私の頭を襲うものは、恐らく一生涯消え去る時のない、私の妻に対する、井上次郎に対する、その妻、春子に対する、唾棄すべき感情のみでありました。

「覆面の舞踏者」江戸川乱歩(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品