わか紫(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
季節外れの茄子と盗賊
- 恋愛
- ミステリ
- 文字数
- 37,743字
- 読了目安
- 約1時間15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 静岡県
- 神奈川県
この作品について
泉鏡花の中編。「新小説」1905年(明治38年)1月号に掲載された。舞台は暖冬の熱海。漁師の娘お鶴と洋装の旅の紳士の出会いから、季節外れの茄子の噂、「大地震が来る」という風説へと筋が広がる。娘、紳士、病身の警部長の妻の三人が物語を動かす。
あらすじ
暮れも押し詰まった伊豆の熱海。珍しい暖冬のなか、崖の漁師・総六の畑に季節外れの茄子が実る。見知らぬ鳥が種を運んできたのだという。総六は、娘のお鶴に初穂の茄子を持たせ、小田原の城の鎮守へ納めに行かせる。十六のお鶴は、のびやかな育ちの美しい娘だ。ところが真鶴の旧関所の跡で、二人の元雲助が茄子の中身を賭けの種にしようと襲いかかる。そこへ洋装の旅の紳士が現れて助け、お鶴は礼に茄子を見せ、紳士は手帳と紫の鉛筆を与える。やがて熱海には「この春は大地震が来る」という風説が広まり、日金颪が吹いた夜、突然の大騒動が起こる。実際には揺れないのに人々は荷物を投げ出して宿を飛び出し、その間に盗賊の一味が各宿で金品をさらってゆく。首領は「御曹子」と呼ばれる万綱で、あの旅の紳士こそその人だった。お鶴は手帳に記された言づけを頼りに、警部長の病身の妻・蔦子が泊まる伊豆屋の座敷に忍び込むが、そこで蔦子に匿われる。蔦子は娘を責めず、夫が書いた手配の書状を渡して逃がす。のちに崖の小屋には、盲目の琵琶弾きが若い女房に手を引かれて住みつき、琵琶の座敷に招かれる。蔦子は一目でそれが誰であるかを悟り、顔を背けた。
登場人物
- お鶴 総六の娘。熱海の海岸育ちの十六の少女
- 総六 崖の小屋に住む老漁師。お鶴の父
- 旅の紳士 洋装で現れ、お鶴を助けた人物
- 蔦子 伊豆屋に滞在する秋山警部長の夫人。肺を病む夫を看病している
- 喜兵衛 伊豆屋の古参の番頭
冒頭部(原文より)
一
「わか紫」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
思い切って声強く、差寄る膝に手をかけた。お鶴は思わず取縋って、忍び音にわっと泣いた。 背に夫人も頬をあて、堪えず、はらはらと落涙して、
「わか紫」泉鏡花(青空文庫)
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