双子の星(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
天の川の岸で銀笛を吹く双子
- 幻想
- 文字数
- 11,048字
- 読了目安
- 約22分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治がもっとも早い時期に書いた童話の一つ。天の川の西の岸に住む双子のお星さま、チュンセ童子とポウセ童子が、毎晩銀笛を吹く役目を果たしながら、思いがけない出来事に出会ってゆく。のちの賢治作品を貫く「まことの願い」や自己犠牲のモチーフが、透きとおった童話の姿ですでに現れている一編である。
あらすじ
天の川の西の岸に、すぎなの胞子ほどの小さな二つの星がある。チュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまが住む水精のお宮である。二人の役目は、夜のあいだ空の星めぐりの歌に合わせて銀笛を吹きつづけること。ある朝、二人は西の野原の泉へ出かけ、滝をこしらえて遊んでいると、大烏の星と蠍の星の争いに出くわし、傷ついた大烏を助けたりする。ある晩、彗星(ほうき星)が二人に近づき、うまい言葉で誘い出した。頼まれるままについて行った双子は、だまされて海の底へ落とされてしまう。海の底で二人はひとでに姿を変えられ、暗い水の中を漂うことになる。それでも二人は役目を欠かしたことを悔い、王様への申し訳なさを思いつづけた。やがて海の王様の計らいと竜巻の助けによって、双子は空へ運び上げられる。帰る道すがら、二人をだました彗星がばらばらに砕けて黒い海へ落ちてゆくのが見えた。「あいつはなまこになりますよ」と竜巻は静かに言う。お宮へ帰り着いた双子は、きちんと座って見えない空の王様に詫び、海の王様からの尊敬とひとでの願いを伝え、さらに自分たちをだましたなまこにも、もしできるならお許しをと願い出た。そして二人はふたたび銀笛を取り上げる。東の空はもう黄金色に染まりはじめていた。
登場人物
- チュンセ童子 天の川の西の岸に住む双子の星の兄
- ポウセ童子 もう一人の双子の星
- ほうき星 双子をだまして海へ落とす彗星
- 竜巻 双子を空へ帰してくれる海の使い
冒頭部(原文より)
天の川の西の岸にすぎなの胞子ほどの小さな二つの星が見えます。あれはチュンセ童子とポウセ童子という双子のお星さまの住んでいる小さな水精のお宮です。 このすきとおる二つのお宮は、まっすぐに向い合っています。夜は二人とも、きっとお宮に帰って、きちんと座り、空の星めぐりの歌に合せて、一晩銀笛を吹くのです。それがこの双子のお星様の役目でした。
「双子の星」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「私どもの不注意からしばらく役目を欠かしましてお申し訳けございません。それにもかかわらず今晩はおめぐみによりまして不思議に助かりました。海の王様が沢山の尊敬をお伝えして呉れと申されました。それから海の底のひとでがお慈悲をねがいました。又私どもから申しあげますがなまこももしできますならお許しを願いとう存じます。」 そして二人は銀笛をとりあげました。 東の空が黄金色になり、もう夜明けに間もありません。
「双子の星」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。