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凱旋祭(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

祭の華やぎと一人の夫人

  • 歴史
  • 心理

泉鏡花 1897年(明治30年)5月 「新小説」

文字数
4,854字
読了目安
約10分
表記
新字旧仮名
種別
小説

この作品について

泉鏡花の初期作。1895年の凱旋祭に沸く県都の様子を、「ぢい様」に宛てた書簡の形で書き送る。生首の提灯、青い毛布で包まれた巨象、獅子や蜈蚣の行列といった華やかな趣向と、その陰で起こる出来事を対照させる。明治30年(1897)5月、「新小説」に掲載された。

あらすじ

1895年の凱旋祭の日、県都は旗と提灯で彩られる。語り手は「ぢい様」に宛て、見たままを書き送る。記念碑の銅像の周りには、青く塗った人の首の形の鬼灯提灯が吊られ、遠山桜は青い毛布で覆われて巨大な象に仕立てられ、その腹の舞台で踊りが催された。町には牡丹の幌をかぶった獅子が十五、六頭練り歩き、体を黒く、足を赤く塗った労働者の列が、大蜈蚣となって駆け抜ける。式場の片隅には、戦死した少尉の夫人が悄然と立っていた。そこへ蜈蚣の列が人波を巻き込んで突っ込み、夫人は倒れて起き上がれなくなる。日暮れには家々に生首の提灯が灯されるが、夜更けに暴風が起こり、灯をことごとく吹き消してしまう。

登場人物

冒頭部(原文より)

 紫の幕、紅の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる、唯うつくしきものの弥が上に重なり合ひ、打混じて、譬へば大なる幻燈の花輪車の輪を造りて、烈しく舞出で、舞込むが見え候のみ。何をか緒として順序よく申上げ候べき。全市街はその日朝まだきより、七色を以て彩られ候と申すより他はこれなく候。

「凱旋祭」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 日暮れて式場なるは申すまでもなく、十万の家軒ごとに、おなじ生首提灯の、しかも丈三尺ばかりなるを揃うて一斉に灯し候へば、市内の隈々塵塚の片隅までも、真蒼き昼とあひなり候。白く染め抜いたる、目、口、鼻など、大路小路の地の上に影を宿して、青き灯のなかにたとへば蝶の舞ふ如く蝋燭のまたたくにつれて、ふはふはとその幻の浮いてあるき候ひし。ひとり、唯、単に、一宇の門のみ、生首に灯さで、淋しく暗かりしを、怪しといふ者候ひしが、さる人は皆人の心も、ことのやうをも知らざるにて候。その夜更けて後、俄然として暴風起り、須臾のまに大方の提灯を吹き飛ばし、残らず灯きえて真闇になり申し候。闇夜のなかに、唯一ツ凄まじき音聞え候は、大木の吹折られたるに候よし。さることのくはしくは申上げず候。唯今風の音聞え候。何につけてもおなつかしく候。

「凱旋祭」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

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