学者アラムハラドの見た着物(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
焔の色と雨の中の不思議な着物
- 幻想
- 文字数
- 5,777字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
古代インドとおぼしい国の塾を舞台にした賢治の童話。学者アラムハラドが、幼い教え子セララバアドの答えに空の高さのような静けさを感じ、さらに山の雨の中で不思議な「着物」を見る。焔の色や雨の降り方といった自然科学の話題が、そのまま精神の世界の話へつながってゆくのが特徴。賢治の科学と信仰が交わる思索的な小品だが、原稿の後半は欠けたまま残っている。
あらすじ
学者アラムハラドは十一人の子を教えている。裁判官や大臣、長者の子らがいるなか、彼は小さなセララバアドがとりわけ好きだったが、えこひいきはしなかった。塾は街はずれの楊の林にあり、子どもたちは聖歌を諳誦し、大きな数の計算をし、鳥や木や石のことを習う。ある日の授業でアラムハラドは焔の話をする。焔は動いていながら形がきまっており、木や場所によって色が変わり、硫黄なら紫、銅なら孔雀石の青になる、と。別の日、一行を連れて山へ出た先生は、雨の降りだしを感じる。林の木の葉がぱちぱちと鳴りはじめるが、雨粒は目に見えない。その雨の中で、アラムハラドは「着物」のようなものをちらりと感じ取る。話は原稿の欠落のためにそこで途切れる。
冒頭部(原文より)
学者のアラムハラドはある年十一人の子を教えておりました。 みんな立派なうちの子どもらばかりでした。 王さまのすぐ下の裁判官の子もありましたし農商の大臣の子も居ました。また毎年じぶんの土地から十石の香油さえ穫る長者のいちばん目の子も居たのです。
「学者アラムハラドの見た着物」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
けれどもアラムハラドはまだ降るまではよほど間があると思っていました。ところがアラムハラドの斯う云ってしまうかしまわないうちにもう林がぱちぱち鳴りはじめました。それも手をひろげ顔をそらに向けてほんとうにそれが雨かどうか見ようとしても雨のつぶは見えませんでした。 ただ林の濶い木の葉がぱちぱち鳴っている〔以下原稿数枚?なし〕 入れを右手でつかんで立っていました。〔以下原稿空白〕
「学者アラムハラドの見た着物」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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