源蔵ヶ原(山本周五郎)のあらすじ・登場人物
掟に生きる者たちとお光
- 歴史
- 心理
- 文字数
- 13,568字
- 読了目安
- 約27分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
山本周五郎が1962年(昭和37年)、「週刊文春」に発表した時代小説。盃のやりとりも酌もしないという奇妙な掟をもつ、瓦屋・石屋・左官らの仲間。その掟の陰にひそむ、市三とお光をめぐる物語を、抑えた筆致で描いた一編である。
あらすじ
市三が小座敷にはいってゆくと、そこにはもう三人が来ていた。瓦屋の息子・宗吉をまん中に、石屋の忠太、左官の又次郎。彼らには、奇妙な「しきたり」があった。盃のやりとりなし、酌のしっこなし——「よそで人と飲むときにはまごつくばかりだ」と忠太はぼやく。この風変わりな掟をもつ仲間たちの陰には、市三とお光をめぐる、ある哀切な事情が隠されていた。物語は、彼らの掟の由来と、その底にひそむ悲しみを、静かにたどっていく。物語の結び、市三は凍てた土の上を、片手で労わるようにそっと撫でる。「お光、辛かったか」——彼の喉に嗚咽がこみあげ、全身がふるえだす。奇妙な掟の底に秘められた、市井の者たちの深い情と哀しみを、抑えた筆致で描いた、山本の一編である。
登場人物
- 市三 仲間のひとり
- お光 市三が悼む女
- 宗吉・忠太・又次郎 仲間の職人たち
冒頭部(原文より)
市三がはいってゆくと、その小座敷にはもう三人来ていた。蝶足の膳を五つ、差向いに並べ、行燈が左右に二つ、火鉢が三つ置いてあった。 瓦屋の息子の宗吉をまん中に、こっちが石屋の忠太、向うに左官の又次郎が坐っていた。市三はかれらに頷いて、こっち側の奥の席へ坐った。
「源蔵ヶ原」山本周五郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
彼は凍てた土の上を、片手で劬るようにそっと撫でた。 「お光」と彼は云った、「辛かったか」 彼の喉へ嗚咽がこみあげてき、全身がふるえだした。
「源蔵ヶ原」山本周五郎(青空文庫)
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