花のき村と盗人たち(新美南吉)のあらすじ・登場人物
初夏の花のき村の五人組
- 幻想
- 文字数
- 9,714字
- 読了目安
- 約19分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
新美南吉が書き、その死の年の1943年(昭和18年)に刊行された童話集の表題作。初夏ののどかな花のき村へやってきた五人組の盗人たちと、一人の子供との出会いを、南吉らしいあたたかな筆致で描く。素朴なユーモアと人間への信頼にみちた、「ごん狐」の作者の代表的な童話の一編である。
あらすじ
若竹が芽をのばし、松蝉の鳴く初夏のひるさがり、のどかな花のき村へ、五人組の盗人がやってくる。盗みの下見に村へ入り込んだ彼らは、それぞれに村のなかへ散っていくが、まだ盗人になりきれない気のいい者たちばかりで、どうにも悪事に身が入らない。かしらの盗人は、村の一人の子供と出会って言葉をかわすうち、その無邪気さと、村人たちの心のよさに触れ、次第に盗みの心を忘れていく。仲間たちもまた、それぞれに村の平和なたたずまいと人情にほだされ、ついに五人はそろって悪事から足を洗い、改心する。のちに村人たちは、自分たちを盗人の難から救ってくれたあの子供を探すが、どうしても見つからない。そこで、あれはきっと土橋のたもとの小さなお地蔵さんが、草鞋をはいて歩いたのだろう、ということに落ち着く。心のよい人々が住む村だからこそ、お地蔵さまが盗人から救ってくれたのだ――。人間への信頼と素朴なユーモアにみちた、南吉童話の名品である。
登場人物
- 五人組の盗人 花のき村へ盗みに入るが、まだ悪に徹しきれない気のいい者たち。村の人情に触れて改心する
- 盗人のかしら 村の子供と出会い、その無邪気さにほだされて盗みの心を忘れていく
- 子供(お地蔵さん) 盗人たちを改心へ導いた子供。村人はのちに、土橋のたもとの地蔵の化身だったのだろうと考える
冒頭部(原文より)
一 むかし、花のき村に、五人組の盗人がやって来ました。 それは、若竹が、あちこちの空に、かぼそく、ういういしい緑色の芽をのばしている初夏のひるで、松林では松蝉が、ジイジイジイイと鳴いていました。
「花のき村と盗人たち」新美南吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
地蔵さんが草鞋をはいて歩いたというのは不思議なことですが、世の中にはこれくらいの不思議はあってもよいと思われます。それに、これはもうむかしのことなのですから、どうだって、いいわけです。でもこれがもしほんとうだったとすれば、花のき村の人々がみな心の善い人々だったので、地蔵さんが盗人から救ってくれたのです。そうならば、また、村というものは、心のよい人々が住まねばならぬということにもなるのであります。
「花のき村と盗人たち」新美南吉(青空文庫)
原文を読む
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