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花咲かぬリラ(山本周五郎)のあらすじ・登場人物

復員青年とリラの花の約束

  • 心理

山本周五郎 1946年(昭和21年)5月 「新青年」

文字数
18,387字
読了目安
約37分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

山本周五郎が1946年(昭和21年)、「新青年」に発表した小説。戦地から復員した、腕白小僧のような笑顔の青年・麻川来太。彼が、修道院にいた富美子を伴って、リラ(ライラック)の花を咲かせる北海道へと旅立つまでを、明るくあたたかな筆致で描く。敗戦直後の再生への希望をこめた一編である。

あらすじ

軍服を着た、肩のたくましい背の高い青年が、大股の特徴のある歩きつきで麻布片町坂を下りてくる。鞄にも雑嚢にも「麻川来太」と筆太に書きなぐった、その名の文字そのままの、あけっ放しな腕白小僧のような笑顔の青年——戦地から生きて帰った、麻川来太である。彼が訪れた家では、玄関先の鸚鵡に「よう、生きていたな」と話しかける。中年の婦人が「まあ来さん、ご無事だったんですか」と胸を押さえて迎える。戦争を生きのびて帰ってきた来太をめぐって、物語はあたたかく展開していく。やがて来太は、修道院にいた富美子とともに、新しい生をはじめようと決める。「なにリラは寒い所が合うんだ、北海道へいったらきっと咲かせてみせるよ」——リラ(ライラック)の花を咲かせるという約束を胸に。地味なワンピースに着換えた富美子の腕を取って、来太は大股に修道院の門を出ていく。腕時計を盗られた癖がまだ抜けないと苦笑する来太に、富美子の明るい笑い声が松林へ隠れていく。早春の日を浴びて、落葉松の芽ぶく枝に鶯が鳴きわたる——。敗戦直後の再生への希望を、明るくあたたかに描いた、山本の一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 軍服を着た肩のたくましい背丈の眼だって高い青年が、大股のひどく特徴のある歩きつきで麻布片町坂を下りて来た。片手に鞄を持ち、右の肩に大きくふくらんだ雑嚢をひっ掛けている、鞄にも雑嚢にも筆太の無遠慮な字で麻川来太と書きなぐってある。

「花咲かぬリラ」山本周五郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

「なにリラは寒い所が合うんだ、北海道へいったらきっと咲かせてみせるよ」  二十分後である、地味なワンピースに着換えた富美子の腕を取って、来太は大股に修道院の門を出ていった。……ようやく中天に昇った早春の日を浴びて、落葉松の芽ぶきだした枝から枝へ鶯の鳴きわたる声が聞こえた。

「花咲かぬリラ」山本周五郎(青空文庫)

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