花椰菜(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
畑で叫ぶ夢の人々
- 幻想
- 文字数
- 1,936字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 小説
この作品について
宮沢賢治の短い幻想作品。カムチャッカに近い土地の畑を調べに来た「私」が、ロシア人やだったん人にまじって、小屋と畑のあたりをさまよう夢のような物語。何を調べに来たのかわからない不安と、東の空へ手をのばして叫ぶ人々の儀式めいた場面が、夢のようにつながっていく。
あらすじ
薄い鼠色の光がこめる中、「私」は粗末な白木の小屋の入口で、日本から渡った百姓のおかみさんと話している。外の畑には花椰菜やトマトが育ち、ロシア人やだったん人が踊るように行き来している。「私」の役目は作物の出来を調べることらしく、横目で畑を見ていると、藤色の衣の男が刀を抜くまねをして見せ、小屋の隅の扉から白髪の老婆が現れる。いつのまにか小屋は消え、東の空に紫苑の花びらが渦を巻くと、人々は手を空にのばして叫びながら跳びあがり、「私」も裸になって一緒に叫ぶ。やがて黒い針葉樹の列を抜けると白崎特務曹長が待っていて、二人は何を調べに来たのかを確かめ合うが、答えは見つからない。曹長は先に立って、ずんずん歩いていく。
登場人物
- 私 作物の出来を調べに来た人
- 白崎特務曹長 「私」を待っている同行者
- 百姓のおかみさん 日本から渡ってきた女
冒頭部(原文より)
うすい鼠がかった光がそこらいちめんほのかにこめてゐた。 そこはカムチャッカの横の方の地図で見ると山脈の褐色のケバが明るくつらなってゐるあたりらしかったが実際はそんな山も見えず却ってでこぼこの野原のやうに思はれた。 とにかく私は粗末な白木の小屋の入口に座ってゐた。 その小屋といふのも南の方は明けっぱなしで壁もなく窓もなくたゞ二尺ばかりの腰板がぎしぎし張ってあるばかりだった。
「花椰菜」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「いや収量がどれだけだったかといふのらしかったぜ。」私は又云った。 向ふにベつの畑が光って見えた。そこにも花椰菜がならんでゐた。これから本国へたづねてやるのも返事の来るまで容易でない、それにまだ二百里だ、と私は考へて又たよりないやうな気がした。 白崎特務曹長は先に立ってぐんぐん歩いた。
「花椰菜」宮沢賢治(青空文庫)
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