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半七捕物帳 蝶合戦(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

白い蝶の群れと弁天堂の尼

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
15,205字
読了目安
約30分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。珍しく宇都宮在の親類を訪ねる旅から戻った半七老人が、旅先で見た雀合戦の話から、江戸の蛙合戦、螢合戦、そして蝶合戦へと話を移していく。万延元年の夏、本所竪川のあたりに幾万という白い蝶が群がり、入り乱れて飛ぶ奇観が人々を驚かせる。本所松坂町では、古道具屋で光を放つ弁天像を見つけたという尼の善昌が「光明弁天」を祀って信者を集め、今年は大きな災いが江戸を襲い、必ず前兆があると予言していた。大地震、大風雨、コレラの大流行、桜田門外の変と凶事が続いた幕末の人心の不安を背景に、流行り神をめぐる人々の信心と欲が描かれる。

あらすじ

万延元年六月の末、本所竪川のあたりに幾万の白い蝶が群がり乱れ飛んだ。松坂町で光明弁天を祀る尼善昌は、かねて今年は大地震や大コロリにも勝る災いが来て必ず前兆があると予言しており、信者たちはこれこそ前兆と恐れて、七月一日から半月の大護摩を頼む。善昌は数年前、賽銭を盗み供物を食った男が血を吐いて死んだ件で、仏罰の霊験を広く信じられていた。祈祷の途中、善昌は弁天像の御戸帳を下ろし、像がないと噂される。祈祷の明けた十六日、弁天堂の台所の床下から、手足を縛られ首を斬られた尼の死骸が見つかった。像は元どおりにあったが、尼の革文庫が消えていた。縄張りの岡っ引が留守のため呼ばれた半七は、畳に残る酒の香、弁天像と死骸の手に残る髪油の匂い、四十過ぎの女らしい肌と足の裏の硬さから、死骸は善昌と親しい女髪結のお国だと見抜く。お国が中の郷の普在寺の若い住職覚光と通じていると聞き、寺の墓地に建ったばかりの卒塔婆を見つける。町方から寺社奉行へ届けて普在寺に乗り込み、裏口から逃げようとした善昌を捕らえた。善昌とお国は、かつて善昌の昔の夫の弟で無心に来る与次郎に、盗みに入る芝居をさせて毒入りの餅を食わせて殺していたのだった。その後、二人は覚光をめぐって争い、お国が弁天像を持ち出して嫉妬から脅したため、善昌は酔ったお国を絞め殺し、首を斬って替え玉にし、首を寺の墓地に埋めたのだった。善昌は獄門、覚光は晒しのうえ追放になった。

登場人物

冒頭部(原文より)

     一  江戸っ子は他国の土を踏まないのを一種の誇りとしているので、大体に旅嫌いであるが、半七老人もやはりその一人で、若い時からよんどころない場合のほかには、めったに旅をしたことが無いそうである。

「半七捕物帳 蝶合戦」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「善昌の仕置がきまると、弁天堂は取り毀されましたが、始末に困ったのはその木像で、かりにも弁天様と名の付くものをどうすることも出来ない。さりとて引き取る者もないので、とうとう評議の上で川へ流すことになりました。それが流れて行くときに一匹の白い蛇が巻き付いていたという評判で、それは善昌の魂だなどと云い触らす者もありましたが、なに、それはみんな嘘の皮で、むかしの人はややもすると斯ういうことを云い触らす。又すぐにそれを信用する。畢竟それだから善昌の尼などの食いものになったのでしょうね。おや、雨の音がいつの間にか止んだようです」  老人は起って縁側の雨戸をあけると、わたしがこの長い話に聴き惚れているあいだに、雨はとうに晴れたとみえて、小さい庭にはびっくりするような明るい月の光りがさし込んでいた。

「半七捕物帳 蝶合戦」岡本綺堂(青空文庫)

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