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半七捕物帳 二人女房(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

闇祭りの夜に消えた女房

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
23,733字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。小金井へ花見に出かけるという語り手に、半七老人は、嘉永二年に子分二人と歩いて小金井の桜を見に行き、府中宿の六所明神に参った思い出を語る。森に棲む鷺がくわえた魚を子どもが奪い合い、家に心中した娘の幽霊が出るという噂を耳にした旅の話から、ひと月余りのち、名物の「闇祭り」の夜に府中で起きた失踪事件へと話は移る。神輿の通る間は町中の灯を消すという暗闇のなかで、四谷の酒屋の女房が姿を消した。甲州街道の宿場の風俗を織り込み、二人の女房の行方を追う一話。

あらすじ

嘉永二年三月、小金井の花見の帰りに府中に泊まった半七らは、宿のはずれに住むならず者友蔵が、娘で調布の女郎だったお国と、四谷塩町の呉服屋和泉屋の養子清七の身請け金を横取りし、二人を多摩川で心中させたと聞く。その家には二人の幽霊が出るという。五月、四谷坂町の酒屋伊豆屋の番頭が、女将お八重が府中六所明神の闇祭りの見物中、灯を消した暗闇のなかで姿を消したと半七に助けを求める。調べると、同じ夜に和泉屋の女将お大も家から姿を消していた。和泉屋の手代幾次郎は、主人の罪を背負って牢死した忠義な番頭の息子だった。そんななか、近所に住む落語家しん吉の母が、旅に出たままの伜が血だらけの顔で夢枕に立つと泣いて騒ぐ。半七は府中へ急行し、しん吉が闇祭りの前から伊豆屋の女将の泊まった宿にいたことを確かめる。夜、女郎屋から飛び出してきたしん吉を捕らえ、友蔵の家に踏み込むと、縛られた中年増がいた。和泉屋のお大だった。お大は幾次郎と通じ、駆け落ちのつもりで盗み出した金を彼に預けて府中で待っていたが、店の乗っ取りをもくろむ幾次郎は、友蔵に始末を頼んでいたのである。清七を女郎遊びに誘ったのも幾次郎の企みだった。一方、お八重はしん吉と駆け落ちしたが、日野の宿で金を持ち逃げされ、多摩川に身を投げて死んでいた。

登場人物

冒頭部(原文より)

四月なかばの土曜日の宵である。 「どうです。あしたのお天気は……」と、半七老人は訊いた。 「ちっと曇っているようです」と、わたしは答えた。 「花どきはどうも困ります」と、老人は眉をよせた。「それでもあなた方はお花見にお出かけでしょう」 「降りさえしなければ出かけようかと思っています」 「どちらへ……」 「小金井です」 「はあ、小金井……。汽車はずいぶん込むそうですね」 「殊にあしたは日曜ですから、思いやられます」

「半七捕物帳 二人女房」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

雨はあしたの日曜まで降りつづいて、わたしの小金井行きはとうとうお流れになった。その翌年の五月なかばに、半七老人の去年の話を思い出して、晴れた日曜日の朝から小金井へ出てゆくと、堤の桜はもう青葉になっていた。その帰り道に府中へまわると、町のはずれに鵜を売っている男を見た。かの友蔵もこんな男ではなかったろうかと思いながら、立ち寄ってその値段を訊くと、男は素気なく答えた。 「十五円……。お前さんはひやかしだろう」  いよいよ友蔵に似て来たので、わたしは早々に逃げ出した。

「半七捕物帳 二人女房」岡本綺堂(青空文庫)

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