半七捕物帳 半七先生(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物
七夕の前日に消えた手習い娘
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 16,389字
- 読了目安
- 約33分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。半七老人の家の座敷に掛かる「報恩額」という大きな額には「半七先生に贈る」と書かれている。そのいわれを尋ねた「わたし」に、老人は大笑いしながら、神田の手習い師匠が書いてくれたものだと語り出す。嘉永三年の七夕の前日、半七の妹で常磐津の師匠のお粂が、弟子で近所の生薬屋の十三の娘お直が手習いの帰りに姿を消したと知らせてくる。お直は七夕の大清書の出来が悪いと、弟子のしつけが厳しく「雷師匠」と恐れられる師匠に叱られて泣いていたという。笹竹に五色の短冊を下げる七夕の習わしや寺子屋の大清書など、江戸の子どもたちの暮らしが描かれ、町内の人間関係のもつれのなかで半七が娘の行方を追う。
あらすじ
嘉永三年七月六日、半七の妹で常磐津の師匠のお粂が、弟子で神田明神下の生薬屋甲州屋の娘お直が行方知れずになったと知らせてくる。十三のお直は、七夕の大清書の出来が悪いと、雷師匠と恐れられる手習い師匠山村小左衛門に叱られ、隣町の瀬戸物屋倉田屋の娘お力に付き添われて帰る途中、姿を消したという。甲州屋の婆やお広は、甲州屋の息子藤太郎と倉田屋の姉娘お紋との縁談を断られた倉田屋を怪しいと半七に告げる。翌朝、小左衛門は、お直を叱ったのは清書のためではなく、稽古場で落とした二通の手紙の中身を強情に隠したからだと明かす。半七は、仮病で越ヶ谷行きを延ばしていた藤太郎を問い詰め、互いの妹を文使いにして、お紋とひそかに通じていたことを白状させる。二人の逢い引きの場だった池の端の女髪結お豊の家の壁に、お直の清書草紙が掛かっているのを見つけ、お豊を問い詰める。お直は手紙を落としたことを怒ったお紋に責められて言い争ううち、喉を絞められて息が絶え、お紋の母とお豊は家出に見せかけて、死骸の始末を谷中の石屋千吉に頼んでいたのだった。半七は谷中へ急ぐ。お直は駕籠の中で息を吹き返していたが、千吉は礼金を得たうえ娘を売り飛ばそうと、猿轡をかませて戸棚に押し込めていた。お直は無事に取り戻され、表沙汰にはせず内分に済ませた。これをきっかけに、藤太郎はお紋を嫁に迎えた。小左衛門は礼に「報恩額」を書き、甲州屋が額に仕立てて半七に贈ったのだった。
登場人物
- 半七 神田三河町の岡っ引。手習いの帰りに消えた娘を探す
- お粂 半七の妹。神田明神下の常磐津の師匠
- お直 神田明神下の生薬屋甲州屋の十三の娘
- 山村小左衛門 神田の手習い師匠。しつけが厳しく雷師匠と呼ばれる
- 藤太郎 お直の兄。気の弱い二十歳の若旦那
- お紋 隣町の瀬戸物屋倉田屋の十八の姉娘
- お豊 池の端に住む女髪結
冒頭部(原文より)
一 わたしがいつでも通される横六畳の座敷には、そこに少しく不釣合いだと思われるような大きい立派な額がかけられて、額には草書で『報恩額』と筆太にしるしてあった。嘉永庚戌、七月、山村菱秋書という落款で、半七先生に贈ると書いてあるのも何だかおかしいようにも思われた。この額のいわれを一度きいて見ようと思いながら、いつもほかの話にまぎれて忘れていたが、ある時ふと気がついてそれを言い出すと、老人は持っている煙管でその額を指しながら大きく笑った。
「半七捕物帳 半七先生」岡本綺堂(青空文庫)
末尾部(原文より)
自分の弟子が救われたので師匠の山村小左衛門は半七のところへわざわざ挨拶に来た。かれは感謝の意を表するために、報恩額の三字を大きく書いた。甲州屋ではそれを立派な額に仕立てて半七に贈ったのであった。 「半七先生のいわれはこうですよ」 老人は再び大きい声で笑った。わたしも釣り込まれて笑い出した。
「半七捕物帳 半七先生」岡本綺堂(青空文庫)
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