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半七捕物帳 張子の虎(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

殺された遊女の枕もとの張子の虎

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
15,670字
読了目安
約31分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。四月のはじめ、花見の話から、半七老人は今はなくなった品川の御殿山の花見のにぎわいに触れ、文久二年三月に品川の妓楼伊勢屋で起きた一件を語る。殺されたのは伊勢屋の売れっ妓お駒で、二年前、店先で八丁堀同心とお尋ね者が斬り合ったとき、二階から草履を投げつけて捕り物を助け、奉行所から褒美を受けて江戸じゅうに名を知られた女だった。そのお駒が客と寝ていた部屋で絞め殺され、枕もとには見覚えのない黄色い張子の虎が置かれていた。品川の宿場の遊女屋の暮らし、遊女と客、新造たちの人間模様を背景に、小さな張子の虎と片方だけの草履が謎を解く鍵になっていく。

あらすじ

文久二年三月、品川の妓楼伊勢屋の売れっ妓お駒が、寝床で絞め殺されているのを、同衾していた芝源助町の呉服屋下総屋の番頭吉助が見つける。枕もとには誰のものとも知れない黄色い張子の虎が置かれていた。お駒は二年前、店先で八丁堀同心室積藤四郎とお尋ね者の石原の松蔵が斬り合ったとき、二階から草履を投げつけて捕り物を助け、奉行所から褒美を受けた評判の女だった。藤四郎に頼まれた半七は、お駒の部屋の窓の下の石垣で重ね草履の片方を見つける。お駒と姉妹のように仲のよかった下新造のお定が、それは松蔵に投げつけてお駒が家宝のように大切にしていた草履だと証言するが、もう片方は見つからなかった。やがて朋輩のお浪が駆け落ちし、仏壇に預けた張子の虎も消える。半七は子分の多吉に松蔵の素性を調べさせ、松蔵が寅年の生まれだと知る。拾った草履は右足用で、松蔵に投げたのは左だったことから、半七は松蔵にゆかりのある者が意趣返しに左の草履を持ち去り、張子の虎を位牌がわりに置いたと見る。松蔵の処刑のあと伊勢屋に住み込んだのはお定だけだった。お定の留守宅から草履のもう片方が見つかるが、お定は姿を消していた。半七は主人預けのはずの吉助が駕籠で出かけるのを尾け、高輪の茶店でお定が吉助を絞め殺すところを捕らえる。お定は松蔵の情婦で、男を捕らえる手助けをしたお駒を恨み、伊勢屋に入り込んで仇を討ち、目撃した吉助を脅して口止めしていたのだった。お浪の駆け落ちもお定がそそのかしたものだった。お定は張子の虎を首に掛けて、引き廻しのうえ獄門となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

     一  四月のはじめに、わたしは赤坂をたずねた。 「陽気も大分ぽか付いて、そろそろお花見気分になって来ましたね」と、半七老人は半分あけた障子の間からうららかに晴れた大空をみあげながら云った。「江戸時代のお花見といえば、上野、向島、飛鳥山、これは今も変りがありませんが、御殿山というものはもう無くなってしまいました。

「半七捕物帳 張子の虎」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「お駒の枕元に置いてあった張子の虎、これも松蔵になにか縁があるんじゃないかと、子分の多吉に云いつけて奉行所の申渡書を調べさせると、石原の松蔵は天保元年の庚寅年の生まれということが判りました。寅年の男と、張子の虎、これもなるほど縁がある。こうなると松蔵になにか引っかかりのある奴がお駒を殺して、松蔵の位牌代りに張子の虎を置いて行ったのじゃないかと鑑定されます。この二つの証拠が揃ったので、もっぱら松蔵にかかり合いのある奴を探索にかかりましたが、下手人はどうも外から入り込んだ形跡がない。その晩の客か、家内の者か、その判断がよほどむずかしいのですが、お定という下新造がお駒と特別に仲良くしていたというのが却って疑いのかかる本で、もう一つには、松蔵が処刑になった後から伊勢屋に住み込んだものはお定一人しかないというのが手がかりで、だんだんその身分を洗いあげているうちに、前にお話し申したような順序で、とうとう本人を引き挙げてしまったんです。伊勢屋の仏壇にしまって置いた張子の虎は、やはりお定が盗み出したもので、ほとぼりのさめた頃にそっと松蔵の墓に埋めて来る積りであったそうです。いよいよ処刑になる時に、当人が最後の願いを聞きとどけられて、お定は紙でこしらえた数珠のはしに其の小さい虎をぶら下げて、自分の首にかけながら引き廻しの馬に乗せられました」

「半七捕物帳 張子の虎」岡本綺堂(青空文庫)

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