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半七捕物帳 異人の首(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

押借り浪士が抱える異人の首

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
15,920字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 神奈川県

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。攘夷を名目にした押借りが江戸の町家を荒らしていた文久元年の春、神田末広町と深川の質屋に、覆面の浪士二人組が紅い髪と鬚の「異人の生首」を携えて現れ、軍用金を出させる。妹お粂がもたらした噂から事件を知った半七は、子分の松吉と開港間もない横浜へ向かう。異国の人と物が流れ込む幕末の世相と、港崎町の遊廓の賑わいを背景に、生首の謎を追う一話。

あらすじ

文久元年三月、半七の妹で常磐津の師匠お粂が、花見の人集めと引き換えに、ある噂を兄に持ち込む。前夜、末広町の質屋丸井に覆面の侍二人が押し入り、攘夷の血祭りにしたという紅毛の異人の生首を突きつけて軍用金を出させたというのだ。同じ夜には深川の質屋近江屋も同じ手口でやられており、子分の松吉が土間で紅い毛を一本拾ってくる。蘭方医に鑑定させると、染めた毛でも獣の毛でもなく、異人の毛らしい。江戸の公使館で首を取られた者はいないので、半七は松吉を連れて横浜へ向かう。現地の岡っ引の子分三五郎によれば、横浜でも去年から生首を抱えた二人組の押借りが横行していた。半七は、英国商館の若い番頭ロイドが港崎町の遊廓岩亀楼で分不相応な金を使い、その遊び仲間のボーイ勝蔵が暇を出されて江戸へ帰ったと聞いて目星をつける。夜、岩亀楼の前でロイドと勝蔵らを見つけて後をつけると、田圃道で「あの品を返せ」と争い始めたので、勝蔵と連れの寅吉を取り押さえる。生首はロイドが故郷から持ってきた精巧な蝋人形の首を砕き、糊紅を塗ったものだった。遊女に入れあげて金に詰まったロイドと勝蔵が押借りをたくらみ、勝蔵が人形を無断で江戸へ持ち出していたのである。二人は死罪となり、ロイドはピストルで自殺した。

登場人物

冒頭部(原文より)

文久元年三月十七日の夕六ツ頃であった。半七が用達から帰って来て、女房のお仙と差し向いで夕飯をくっていると、妹のお粂がたずねて来た。お粂は文字房という常磐津の師匠で、母と共に外神田の明神下に暮らしていることはすでに紹介した。 「いい陽気になりました」と、お粂はまだ白い歯をみせて笑いながら会釈した。「姉さん。今年はもうお花見に行って……」

「半七捕物帳 異人の首」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「まえにも申す通り、異人の首がむやみに手に入るわけのものじゃあるまい。もしほんとうに首を取ったとすれば一大事で、とうに奉行所の耳にもはいっている筈です。だが、偽首となると髪の毛がわからない。その紅い毛は日本人の毛じゃあない。といって、獣の毛でもない。もちろん唐蜀黍でもないと云う。そこでわたくしは舶来の人形ではないかとふと考えたんです。その前の年に横浜に行って、実によく出来ている舶来の人形を見せられたことがありますから、この種はどうも横浜から出ているらしいと思って、乗り出してみると案の通りでした。勝蔵と寅吉はなかなか強情を張っていましたが、わたくしが唯一言『貴様たちが商売道具につかっている舶来の人形はどこから持ち出した。あのロイドから借りて来たか』と、云いますと、奴らは蒼くなってふるえ出して、みんなべらべらとしゃべってしまいましたよ。ふたりは死罪になりました。ロイドは外国人ですから、うっかり手をつけるわけにも行かなかったんですが、同類ふたりが挙げられたのを聞いて、ピストルで自殺したそうです。人形の首は深川の寅吉の家の床下に隠してあったのを探し出して、丸井と近江屋の番頭をよび出して見せますと、まったくそれに相違ないと申し立てました。その首は参考のために保存して置こうという意見もあったんですが、とうとう叩き毀してしまったということです」

「半七捕物帳 異人の首」岡本綺堂(青空文庫)

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