半七捕物帳 十五夜御用心(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物
月見の夜、古寺の井戸に四つの骸
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 20,675字
- 読了目安
- 約41分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。語り手が戯曲「虚無僧」を書く下地になった半七老人の話から、虚無僧と僧侶の絡む一件が語られる。嘉永六年、将軍家慶の死去で鳴物停止となった静かな十五夜、本所押上村の道楽息子元八は、道を尋ねてきた若い女に付きまとい、現れた二人の虚無僧に投げ飛ばされる。三人の後をつけると、行き着いたのは住職と納所の二人だけが住む荒れ寺の竜濤寺だった。藪蚊の唸る古寺を舞台に、半七が子分の松吉と謎を解いていく一話。
あらすじ
嘉永六年の十五夜、押上村の元八は、道を尋ねた若い女に絡んで二人の虚無僧に投げ飛ばされ、三人が荒れ寺の竜濤寺に入るのを見届ける。四日後、墓参りに来た近所の荒物屋の老婆お鎌が、寺の古井戸から住職全達、納所全真、虚無僧二人の死骸を見つける。どの体にも傷はなく、水を飲んだ様子もない。寺社方の声がかりで出張った半七は、押上の顔役だった緑屋甚右衛門から元八の話を聞き、寺を調べる。掘り返した跡と仏具の新しい指の跡を見つけ、木魚が二重底になっていて、中に女文字で「十五や御ようじん」と書いた結び文が入っているのを探り当てる。元八は、あの夜寺に忍び込み、お鎌に一歩もらって追い返されたと白状し、納所が長崎の諏訪祭りの話をしていたと語る。お鎌は姿を消しており、半七は結び文と彼女の帳面の筆跡が同じだと見抜く。その夜、寺に張り込むと、二人の女が元八の死骸を井戸に投げ込みに来た。半七は匕首を持つ長崎の女郎あがりおまんを取り押さえ、お鎌も後に捕らえられる。寺は盗賊一味の巣で、僧と虚無僧はみな偽者だった。おまんをめぐる嫉妬から三人が全真を殺そうとたくらみ、全真の叔母のお鎌がそれを知らせ、おまんが先回りして眠り薬を盛ったが、手違いで全真まで死なせてしまったのだった。
登場人物
- 半七 神田の岡っ引。寺社方の声がかりで押上村の古寺の一件を調べる
- 松吉 半七の子分。寺の木魚の仕掛けを調べる
- 元八 押上村の農家の伜。小博奕も打つ道楽者
- 甚右衛門 押上の元博徒で、今は小料理屋緑屋の主人。半七をもてなす
- お鎌 竜濤寺の近くで荒物屋を営む老婆。古井戸の死骸を最初に見つける
- 全達・全真 荒れ寺の竜濤寺に住む住職と納所
冒頭部(原文より)
私はかつて「虚無僧」という二幕の戯曲をかいて、歌舞伎座で上演されたことがある。その虚無僧の宗規や生活については、わたし自身も多少は調べたが、大体はそのむかし半七老人から話して聞かされたことが土台になっているのであった。 虚無僧の話をするついでに、半七老人は虚無僧と普通の僧とに絡んだ一場の探偵物語を聞かせてくれたことがある。老人は先ず本所押上村について説明した。
「半七捕物帳 十五夜御用心」岡本綺堂(青空文庫)
末尾部(原文より)
「問題の睡り薬は、どっちの女が持っていたんです」 と、私は最後に訊いた。 「いや、それがおかしいので……」 と、老人は笑った。 「おまんはお鎌から受け取ったと云い、お鎌はおまんから受け取ったと云い、両方で押し合いをしているんです。もうこうなった以上は、誰が持って居ようとも、罪科に重い軽いは無いわけですが、それでもお互いに強情を張って、しまいまで素直に白状しませんでした。しかし私の鑑定では、おまんが持っていたんでしょうね」
「半七捕物帳 十五夜御用心」岡本綺堂(青空文庫)
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