アプリで読む

無料・登録不要

半七捕物帳 勘平の死(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

素人芝居の勘平は本身で腹を切った

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1917年(大正6年) 「文芸倶楽部」

文字数
15,969字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第三話で、1917年(大正6年)に「文芸倶楽部」に掲載された。師走の赤坂で半七老人に出会った「わたし」が、安政五年の暮れに京橋具足町の鉄物屋・和泉屋で起きた一件を聞く。家じゅうが芝居好きの和泉屋では年忘れの素人芝居が恒例で、その晩は「忠臣蔵」の通しが演じられていた。六段目、若旦那の勘平が腹を切る場面で、小道具のはずの刀が本身にすり替わっていたことから事件が始まる。素人芝居や常磐津の師匠、商家の奉公人といった江戸の町人の暮らしを背景に、半七は大店の内情へ分け入っていく。のちに六代目尾上菊五郎によって劇化された話としても知られる。

あらすじ

安政五年の暮れ、京橋具足町の大きな鉄物屋・和泉屋の年忘れの素人芝居で、総領息子の角太郎が「忠臣蔵」六段目の勘平を演じた。ところが腹を切る場面で、小道具のはずの刀が本身にすり替わっていたため、角太郎は脇腹を深く突き、二日二晩苦しんだ末に死ぬ。葬式の翌日、半七の妹お粂が、下谷の常磐津の師匠・文字清を連れてくる。文字清は、角太郎は和泉屋の主人とのあいだに産んだ自分の子で、実の娘お照に跡を継がせたいおかみさんが刀をすり替えたにちがいない、仇を取ってくれと訴える。一方、おかみさんの兄・大和屋十右衛門は、妹が継母根性の疑いをかけられるのを案じ、真相の詮議を半七に頼む。十右衛門から、角太郎が仲働きのお冬と恋仲で、近く嫁にする話があったことを聞いた半七は、楽屋の四畳半に角太郎と同室していた店の者・和吉に目をつける。半七は昼酒で顔を赤くして店に乗り込み、酔ったふりで、この店には主殺しがいると怒鳴り、磔刑の仕置きの様子まで語って聞かせる。やがて和吉は寝込んでいるお冬のもとへ忍んでいき、お冬恋しさに若旦那を憎み、刀をすり替えたことを打ち明ける。縄目と磔刑を恐れた和吉は物置で首を縊って死んだ。半七は、店から引き廻しの科人を出して暖簾に傷をつけまいと、わざと嚇して自滅させたのだと明かし、和吉は乱心として内分に済ませる。そのかわり文字清にだけは真相を話し、和泉屋への出入りを許してやってほしいと頼むと、おかみさんは泣いて詫び、これからは姉妹同様に付き合うと約束した。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  歴史小説の老大家T先生を赤坂のお宅に訪問して、江戸のむかしのお話をいろいろ伺ったので、わたしは又かの半七老人にも逢いたくなった。T先生のお宅を出たのは午後三時頃で、赤坂の大通りでは仕事師が家々のまえに門松を立てていた。砂糖屋の店さきには七、八人の男や女が、狭そうに押し合っていた。年末大売出しの紙ビラや立看板や、紅い提灯やむらさきの旗や、濁った楽隊の音や、甲走った蓄音機のひびきや、それらの色彩と音楽とが一つに溶け合って、師走の都の巷にあわただしい気分を作っていた。 「もう数え日だ」  こう思うと、わたしのような閑人が方々のお邪魔をして歩いているのは、あまり心ない仕業であることを考えなければならなかった。私も、もうまっすぐに自分の家へ帰ろうと思い直した。

「半七捕物帳 勘平の死」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 八笑人でもお馴染みの通り、江戸時代には素人のお座敷狂言や茶番がはやりまして、それには忠臣蔵の五段目六段目がよく出たものでした。衣裳や道具がむずかしくない故もありましたろう。わたくしもよんどころない義理合いで、幾度も見せられたこともありましたが、この和泉屋の一件があってから、不思議に六段目が出なくなりました。やっぱり何だか心持がよくないと見えるんですね」

「半七捕物帳 勘平の死」岡本綺堂(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品