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半七捕物帳 金の蝋燭(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

身投げの女が抱いた金の蝋燭

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
21,167字
読了目安
約42分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 静岡県

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。明治三十年前後の秋の夜、半七老人の家で電灯が停電し、灯された蝋燭を縁に昔話が始まる。安政二年、江戸城本丸の御金蔵が破られ、江戸中の御用聞きが探索に駆り出されていた春、修繕中の両国橋の仮橋の下から、風呂敷包みを抱いた女の死骸が上がる。包みの中の大蝋燭は、芯が金無垢の延べ棒だった。御金蔵破りとの関わりを疑う半七が、子分の幸次郎と金の蝋燭の出所を追う一話。

あらすじ

御金蔵破りの探索が続く安政二年四月、修繕中の両国橋の仮橋から人の落ちる水音がし、数日後、橋の下から三十二三の小粋な女の死骸が見つかる。女が抱えていた包みの蝋燭五本は、どれも芯が金無垢の延べ棒だった。御金蔵の小判を鋳潰したものではないかと見た半七は、子分の幸次郎と調べに出る。橋番の久八は、四十近い男が毎日仮橋から川を覗いていたと話す。広小路で易者に見てもらい、仮橋で川に手を合わせる奥山の茶屋女お光を見とがめた半七は、彼女を問いただす。お光の旦那で浅草田町の金貸し宗兵衛の女房お竹が、お光の家へ乗り込んで夫と大喧嘩をし、「あたしが死んでも蝋燭が物を云うぞ」と叫んで飛び出していたのだった。宗兵衛の家はすでにもぬけの殻で、紙屑籠から「五年前のことを忘れたか」と書いたお竹の書き損じが出てくる。五年前の秘密となれば、御金蔵破りとは関わりがない。お竹を乗せた駕籠の行き先、本所の錺屋増蔵を訪ねると、増蔵は宗兵衛に金の蝋燭を売りさばくよう頼まれ、預かっていた一本をあの夜お竹が取り返しに来たと語る。その帰りに半七らは、仮橋でまた川を見つめていた宗兵衛を捕らえる。五年前、東海道の日坂峠の麓で茶屋を営んでいた夫婦は、病に倒れた中間ふうの旅人を介抱し、礼に蝋燭を一本もらった。芯が金だと知った宗兵衛は旅人を追って絞め殺し、残りの蝋燭を奪って逃げていたのである。蝋燭は大名が江戸の役人に贈る賄賂の品だったらしい。

登場人物

冒頭部(原文より)

秋の夜の長い頃であった。わたしが例のごとく半七老人をたずねて、面白い昔話を聴かされていると、六畳の座敷の電灯がふっと消えた。 「あ、停電か」  老人は老婢を呼んで、すぐに蝋燭を持って来させた。 「行灯やランプと違って、電灯は便利に相違ないが、時々に停電するのが難儀ですね」 「それでもお宅には、いつでも蝋燭の用意があるのには感心しますね」と、わたしは云った。 「なに、感心するほどのことでも無い。わたくしなぞは昔者ですから、ランプが流行っても、電灯が出来ても、なんだか人間の家に蝋燭は絶やされないような気がして、いつでも貯えて置くんですよ。それが今夜のような時にはお役に立つので……」

「半七捕物帳 金の蝋燭」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

それがなぜ世間へ知れずにいたかというに、その大名も元来秘密の仕事ですから、たとい途中でどんな事があろうとも、表向きの詮議は出来ません。江戸の幕府の役人たちに蝋燭を贈ったなぞということが世間へ知れては、その屋敷の大迷惑になりますから、何事も泣き寝入りにして、闇から闇へ葬るのほかはない。それを承知で、持ち逃げをした奴もあるわけです。昔はそういうたぐいの秘密がいろいろありました。いや、今日でも『珍物』なぞという贈り物があるとか聞いていますが……。はははははは。  ついでに申し上げますが、御金蔵やぶりの藤十郎と富蔵は、安政四年二月二十六日に召し捕られ、五月十三日に千住の小塚ッ原で磔刑になりました。わたくしも随分これには頭を痛めたんですが、運がないのか、知恵がないのか、他人に巧を奪われて、この捕物にはいっさい係り合いがなかったのを今でも残念に思っています」

「半七捕物帳 金の蝋燭」岡本綺堂(青空文庫)

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