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半七捕物帳 松茸(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

師走の両国橋にたたずむ女

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
17,501字
読了目安
約35分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。半七老人の誕生祝いの席に、綺堂の別作「三浦老人昔話」の語り手・三浦老人が同席し、上州太田の金山から将軍家へ宿送りで運ばれた「御松茸」献上の騒ぎを前置きとして語る。本題は文久三年の暮れ、師走の両国橋の上にたたずむ若い女を、半七が身投げと見て呼び止めるところから始まる。女は外神田の糸綿問屋・加賀屋の嫁に付いて来た女中で、何を問われても事情を明かそうとしない。江戸の風俗と旧い迷信が事件の背後に絡む一話。

あらすじ

半七老人の誕生祝いの席で、三浦老人がまず、上州太田の金山から江戸へ宿送りで運ばれた献上の松茸の騒ぎを語り、半七老人が本題を引き取る。文久三年の師走、両国橋の上で欄干を離れない若い女を、半七は身投げと見て呼び止める。女は外神田の加賀屋の嫁お元に熊谷の里から付いて来た女中お鉄で、どう問い詰めても訳を明かさない。橋番小屋の外には頬かむりの男がこちらを窺っていた。のちに蕎麦屋の六助から、熊谷訛りの若い男がお鉄を呼び出していると聞いた半七は、加賀屋の近くで二人の密会を見張る。言い争いの末にお鉄が剃刀で男に斬りかかり、半七が止めると男は逃げ出し、追いつめられて裸のまま不忍池へ飛び込み、凍え死んでしまう。半七の家で待っていたお鉄は、ついに一切を打ち明ける。男は隣り村の百姓安吉で、取り上げ婆の伜として、お元が実は男を食い殺すと忌まれた丙午の生まれで、人別帳を書き直して江戸へ嫁いだ秘密を知っていた。八幡祭りで二人に出会って以来、安吉は秘密を種に金をゆすり、お鉄を手籠めにしたうえ、一緒に逃げようと迫っていた。しかも安吉自身、献上の松茸の籠に煙管を挟んだまま送ってしまい、重い咎めを恐れて国を逃げて来たお尋ね者だった。お鉄の忠義に免じて半七は加賀屋の秘密を表に出さず、安吉の死は松茸の一件だけで片づけた。お鉄はのちに三浦老人夫婦の媒妁で嫁いでいった。

登場人物

冒頭部(原文より)

十月のなかばであった。京都から到来の松茸の籠をみやげに持って半七老人をたずねると、愛想のいい老人はひどく喜んでくれた。 「いや、いいところへお出でなすった、実は葉書でも上げようかと考えていたところでした。なに、別にこれという用があるわけでも無いんですが、実はあしたはわたくしの誕生日で……。こんな老爺さんになって、なにも誕生祝いをすることも無いんですが、年来の習わしでほんの心ばかりのことを毎年やっているというわけです。勿論、あらたまって誰を招待するのでもなく、ただ内輪同士が四、五人あつまるだけで、あなたも御存じの三浦さんと、せがれ夫婦と孫が二人。それだけがこの狭い座敷に坐って、赤い御飯にお頭付きの一尾も食べるというくらいのことです。この前日に京都の松茸を頂いたのは有難い。おかげで明晩の御料理が一つ殖えました。そういう次第で、なんにも御馳走はありませんけれども、あなたも遊びに来て下さいませんか」

「半七捕物帳 松茸」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

お鉄の忠義に免じて、半七は加賀屋に関する事件をいっさい発表しなかった。お鉄には勿論なんの咎めもなかった。安吉の死は単に松茸の問題だけで解決してしまった。お鉄は二十一の年まで加賀屋に奉公して、若夫婦のあいだに男の児が出来たのを見とどけて、近所の酒屋の嫁に貰われた。その媒妁人はかの三浦老人夫婦であった。  その嫁入りのときに加賀屋でも相当の支度をしてくれたが、お元の里方からはお鉄の附金として二百両の金を送って来た。半七のところへも百両とどけて来た。

「半七捕物帳 松茸」岡本綺堂(青空文庫)

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