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半七捕物帳 猫騒動(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

捨てても戻る猫婆の猫

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1918年(大正7年) 「文芸倶楽部」

文字数
15,883字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第十二話で、1918年(大正7年)に「文芸倶楽部」に掲載された。二月のある日、子猫を膝にのせた半七老人が、猫が化けるという話は本当だろうかと問いかけ、自分が出会った「変なこと」として語り出す。文久二年の秋、芝神明宮の近くの裏長屋に、二十匹もの猫を飼って「猫婆」と呼ばれる老婆おまきと、その孝行息子で魚の棒手振りの七之助が住んでいた。猫の悪さに手を焼いた長屋の人々が猫を捨てに行くが、猫たちはいつのまにか戻ってくる。生姜市でにぎわう芝神明の祭礼や裏長屋の人づきあいを背景に、怪談めいた出来事と人の心の揺れが描かれ、謎解きだけでは割り切れない後味を残す一編である。

あらすじ

文久二年の秋、芝神明の近くの裏長屋で、猫好きのおまき婆さんは二十匹もの猫を飼い、近所から「猫婆」と嫌われていた。孝行息子で魚売りの七之助は、母の言いつけで毎日売り物の魚を猫のために残して帰る。猫の悪さに堪えかねた長屋の者が家主に訴え、猫は遠くへ捨てられるが、一夜のうちにみな戻ってくる。祭礼の夜には、白猫が後脚で立って屋根を歩き、おまきの家へ入るのを鋳掛屋の女房が見たという。化け猫と恐れた家主の命で、猫はすべて重しをつけて芝浦の海に沈められた。その七日後、おまきが土間で頭に傷を負って死んでいるのを、隣の大工の女房お初が見つける。医者は卒中と診たて、七之助は隣町の魚屋三吉に伴われて帰ってきた。葬式で話を聞き込んだ手先の熊蔵の知らせで、半七は長屋に出向き、お初の顔色の変化から目星をつけ、空き家に潜んで、お初が七之助を三吉のもとへ相談に行かせるのを聞く。問い詰められたお初は、猫がいなくなってもおまきが魚を持ち帰らせ続けるので、試しに空の盤台で帰った七之助に向かって、母の顔が耳の立った猫の顔に変わったと打ち明ける。猫が母に化けていると思った七之助は天秤棒で打ち殺したが、死骸は母のままだった。お初と三吉は七之助をかばい、病死に見せかけたのだった。翌朝、七之助の死骸が、猫を沈めたのと同じ芝浦の海に浮かんだ。おまきの家の縁の下からは、腐った魚の骨がたくさん出てきた。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  半七老人の家には小さい三毛猫が飼ってあった。二月のあたたかい日に、私がぶらりと訪ねてゆくと、老人は南向きの濡縁に出て、自分の膝の上にうずくまっている小さい動物の柔らかそうな背をなでていた。

「半七捕物帳 猫騒動」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「お話はまあこういう筋なんですがね」と、半七老人はここで一と息ついた。「それからだんだん調べてみましたが、七之助はまったく孝行者で、とても正気で親殺しなんぞする筈はないんです。隣りのお初という女も正直者で、嘘なんぞ吐くような女じゃありません。そうすると、まったくこの二人の眼にはおまきの顔が猫に見えたんでしょう。猫が乗憑ったのかどうしたのか不思議なこともあるもんですね。それからおまきの家をあらためて見ますと、縁の下から腐った魚の骨がたくさん出ました。猫がいなくなった後も、おまきはやっぱりその食い物を縁の下へほうり込んでいたものと見えます。なんだか気味が悪いので、家主もとうとうその家を取り毀してしまったそうですよ」

「半七捕物帳 猫騒動」岡本綺堂(青空文庫)

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