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半七捕物帳 お化け師匠(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

娘の一周忌、黒い蛇が師匠を巻く

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1917年(大正6年) 「文芸倶楽部」

文字数
16,325字
読了目安
約33分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第五話で、1917年(大正6年)に「文芸倶楽部」に掲載された。氷川神社の祭りの日、雨に降りこめられた「わたし」に、半七老人が「蛇の話」として安政の大地震の前年の一件を語る。下谷御成道の踊りの師匠・水木歌女寿は、芸を仕込んだ養女の歌女代を前年に亡くして以来、家に幽霊が出ると噂され「お化け師匠」と呼ばれていた。その師匠が、娘の一周忌に黒い蛇を頸に巻きつけて死んでいるのが見つかる。浅草の四万六千日、盆前の墓参り、下っ引という裏方の仕事など、江戸の夏の暮らしが細やかに描かれ、怪談めいた出来事に半七がどう向き合うかが読みどころになる。

あらすじ

安政の大地震の前年の七月十日、浅草観音へ朝参りに行った帰りの半七は、下っ引の源次から、下谷御成道の踊りの師匠・水木歌女寿が死んだと聞かされる。慾の深い歌女寿は、病身の養女・歌女代に大名屋敷の留守居役の囲い者になれと迫り、断られると恨んで、寝込んだ娘を無理に稽古台に立たせつづけた。歌女代は去年の七月九日、山姥を踊りながら倒れて十八で死に、それ以来、家に幽霊が出ると噂されて歌女寿は「お化け師匠」と呼ばれていた。その師匠が、ちょうど娘の一周忌の朝、蚊帳のなかで黒い蛇に頸を巻かれて死んでいた。蛇の頭を懐紙で軽く押さえるとすぐ首を縮めるのを見た半七は、人が絞め殺してから蛇を巻きつけたと見抜き、手先のひょろ松に池鯉鮒の御符売りの宿を探させる。歌女代の墓に毎月参る経師職の息子・弥三郎を問いただすと、若い師匠とひそかに思い合っていたこと、娘の死後は歌女寿にしつこく言い寄られていたこと、五月末に師匠の家で四十ばかりの色の黒い男が待っていて、師匠と喧嘩して帰ったことを打ち明ける。半七は御厩河岸の渡し船で御符売りを見つけてあとを追うが、船中で御符売りが、商売道具の蛇を盗んだと別の男に掴みかかる。その男こそ歌女寿の昔の情夫で、もとは上野の寺の僧だった。久しぶりに江戸へ戻ったのに冷たくされた男は、お化け師匠の評判に乗じて祟りに見せかけようと、同宿の御符売りから馴らした蛇を盗み、師匠を絞め殺していたのだった。男は死罪になった。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  二月以来、わたしは自分の仕事が忙がしいので、半七老人の家へ小半年も無沙汰をしてしまった。なんだか気になるので、五月の末に無沙汰の詫びながら手紙を出すと、すぐその返事が来て、来月は氷川様のお祭りで強飯でも炊くから遊びに来てくれとのことであった。わたしも急に老人に逢いたくなって、そのお祭りの日に赤坂に出て行くと、途中から霧のような雨が降って来た。

「半七捕物帳 お化け師匠」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 老人に案内されて、わたしは町内の飾り物などを観てあるいた。その晩、家へ帰って東海道名所図会を繰ってみると、三州池鯉鮒の宿のくだりに知立の神社のことが詳しく記されて「蝮蛇除の神札は別当松智院社人よりこれを出だす。遠近これを信じて授かる者多し。夏秋の頃山中叢林にこれを懐中すれば蝮蛇逃げ去るという、云々」と、書いてあった。

「半七捕物帳 お化け師匠」岡本綺堂(青空文庫)

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