アプリで読む

無料・登録不要

半七捕物帳 奥女中(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

茶店の娘を連れ去る謎の御殿

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1917年(大正6年) 「文芸倶楽部」

文字数
16,240字
読了目安
約32分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第七話で、1917年(大正6年)に「文芸倶楽部」に掲載された。避暑から戻った「わたし」に、半七老人がきりぎりすや月見の話の流れで語る、文久二年の八月十五夜前後の一件。永代橋のたもとで茶店を出す母お亀が、十七の娘お蝶が何者かに乗物でさらわれては十日ほどで帰されることをくり返し、そのたびに十両を持たされてくると相談に来る。娘が連れて行かれるのは大名の下屋敷らしい奥まった屋敷で、美しい振袖を着せられ、口をきくな、顔を上げるなと命じられる。捕り物の手柄よりも、奥向きの不思議な暮らしと十五夜の情景が印象に残る一編である。

あらすじ

文久二年八月十四日、永代橋の際に茶店を出すお亀が半七を訪ね、十七の娘お蝶のことを相談する。五月、立派な武士と御殿風の女が相次いで店に来たあと、お蝶は浜町河岸で乗物に押し込まれ、大名屋敷のような所へ連れて行かれた。そこでは振袖を着せられて机に向かわされ、口をきくな、顔を上げるなと命じられ、夜は白い影が蚊帳の外を立ち迷った。十日目に十両を持たされて帰され、その後もう一度同じことがあった。三度目に連れ去られたあと、御殿風の女が、音信不通の約束で娘をもらいたい、手当ては二百両と申し入れてきたという。十五夜の晩、半七がお亀の家で待っていると、奥女中らしい女が迎えに来て、二百両を並べ、承知しなければ自害すると迫る。半七は迎えが辻駕籠であることと、女の右の小指に三味線の撥胼胝があることを見抜き、偽者だと言い当てる。女は深川の長唄の師匠くずれのお俊で、噂を聞きつけてお蝶を横取りしようとしたのだった。そこへ本物の奥女中・雪野が現れ、屋敷の名に関わると言ってお俊の赦しを請い、事情を打ち明ける。ある大名の奥方は十七の姫を疱瘡で亡くして物狂おしくなり、家来たちが姫によく似たお蝶を替え玉にしていたのだった。大名の妻子の帰国が許されたため、奥方を国許へ送るにはお蝶を連れて行くほかないという。事情を知ったお蝶はみずから奉公を承知し、母お亀も一緒に国へ下った。明治になって奥方が亡くなると、お蝶は暇をもらい、相当の家へ嫁いだという。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  半月ばかりの避暑旅行を終って、わたしが東京へ帰って来たのは八月のまだ暑い盛りであった。ちっとばかりの土産物を持って半七老人の家をたずねると、老人は湯から今帰ったところだと云って、縁側の蒲莚のうえに大あぐらで団扇をばさばさ遣っていた。狭い庭には夕方の風が涼しく吹き込んで、隣り家の窓にはきりぎりすの声がきこえた。

「半七捕物帳 奥女中」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「それから又話が進んで来て、いっそ阿母も一緒に行ったらどうだということになりました。江戸には近しい親戚も無し、自分もだんだんに年をとって来るもんですから、お亀も娘のそばに行った方が好いという料簡になって、世帯をたたんで一緒に遠いお国へ行きましたよ。なんでも御城下に一軒の家を持たせて貰って、楽隠居のようなふうで世を終ったそうです。明治になって間もなく、その奥方も亡くなったもんですから、お蝶は初めてお暇が出て、その屋敷から立派に支度をして貰って、相当の家へ嫁いだという噂ですが、多分まだ生きているでしょう。お俊という奴は江戸を食いつめて駿府へ流れ込んで、そこでお仕置になったとか聞いています」

「半七捕物帳 奥女中」岡本綺堂(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品