半七捕物帳 大阪屋花鳥(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物
開帳の人込みで見初めた嫁
- ミステリ
- 歴史
- 文字数
- 26,137字
- 読了目安
- 約52分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。明治三十年の吉原の大火の噂から、半七老人は、柳亭燕枝の人情噺や芝居にもなった天保年間の放火犯の遊女「大阪屋花鳥」の話に移る。八丈島へ流されながら島抜けして江戸へ舞い戻った花鳥が、さらに罪を重ねた一件である。語られるのは、半七がまだ十九歳で、のちの養父吉五郎の下で駆け回っていたころの事件。天保十二年の浅草観音の開帳で、日本橋の鍋釜問屋鍋久の母子が、巾着切りから救ってくれた浪人の娘に目をとめるところから始まる。実在の人物の名を借りた、長めの一話。
あらすじ
天保十二年三月、浅草観音の開帳で、日本橋北新堀の鍋釜問屋鍋久の若主人久兵衛は、巾着切りに紙入れを抜かれかけたところを若い娘の一声に救われる。娘は直後に巾着切りに当て身を食わされて倒れ、介抱した母おきぬは、山谷で手習い師匠をする浪人磯野小左衛門の娘お節の美しさと孝行ぶりにほれ込み、多額の支度金と仕送りを約束して嫁に迎える。ところが七月末の雨の夜、お節は乱心したように髪を振り乱して駆け出し、新堀川へ身を投げ、奥では久兵衛が喉を切られて死んでいた。鍋久は乱心として内々に済ませる。吉五郎の指図で、子分の徳次と若い半七が乗り出す。土蔵から二度も大金が消えていたこと、品川の夜釣りで拾ったと称してお節の片袖を届けて礼金を取った男がいたこと、お節の剃刀は鏡台に残っていたことから、二人は川に飛び込んだのは替え玉だとにらむ。小僧の口から、若い者新次郎がお節に頼まれて蔵の金を盗み、山谷へ届けていたことが割れるが、小左衛門には逃げられ、一件は持ち越しとなる。翌年、牢から出た娘義太夫が、牢名主の島抜け女花鳥の横暴と、毎日の鰻飯の振る舞いを訴える。その金の出どころを怪しんだ吉五郎と半七は、片袖を届けた女衒の半介を締め上げ、花鳥がお節の替え玉となって久兵衛を殺し、泳いで逃げたことを白状させる。開帳での出会いそのものが、花鳥と小左衛門父娘、巾着切りの仕組んだ芝居だったのである。
登場人物
- 半七 十九歳の駆け出しの岡っ引。のちの養父吉五郎の指図で、兄貴分の徳次について働く
- 吉五郎 神田の岡っ引の親分。のちに半七の養父となる
- 徳次 吉五郎の古参の子分。半七を連れて鍋久の一件を探る
- 久兵衛 日本橋北新堀の鍋釜問屋鍋久の若主人
- お節 山谷の浪人磯野小左衛門の娘。美しく、しとやかな孝行娘
- 大阪屋花鳥 吉原の元遊女。放火の罪で八丈島へ流され、島抜けして江戸へ戻る
冒頭部(原文より)
明治三十年三月十五日の暁方に、吉原仲の町の引手茶屋桐半の裏手から出火して、廓内百六十戸ほどを焼いたことがある。無論に引手茶屋ばかりでなく、貸座敷も大半は煙りとなって、吉原近来の大火と云われた。それから四、五日の後に半七老人を訪問すると、老人は火事の噂をはじめた。 「吉原がたいそう焼けたそうですね。あなたにお係り合いはありませんか」 「御冗談でしょう。しかし六、七年前に焼けて、今度また焼けて、吉原も気の毒ですね」と、わたしは云った。
「半七捕物帳 大阪屋花鳥」岡本綺堂(青空文庫)
末尾部(原文より)
小左衛門の申し立てによると、お節を鍋久へ縁付けて毎月相当の仕送りを受け、自分はそれで満足している積りであったが、それでは第一に花鳥が承知しない。本人のお節も承知しない。それに引き摺られて、だんだんに悪事を重ねるようになったのだと云っていたそうですが、果たしてどんなものでしょうか」
「半七捕物帳 大阪屋花鳥」岡本綺堂(青空文庫)
原文を読む
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