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半七捕物帳 雷獣と蛇(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

雷とともに現れる怪しい獣

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
13,943字
読了目安
約28分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編で、二つの話を語る二話仕立ての構成をとる。前夜の雷を話の糸口に、半七老人は、昔の江戸には夕立とともによく雷が鳴り、雷とともに落ちてくると信じられた「雷獣」を見たという話も多かったと語る。一つ目は慶応元年の夏、浅草三好町の米屋の蔵の前に雷が落ちて娘が死に、女中が駆け回る雷獣の姿を見たという一件。二つ目は文久三年の夏、千駄ヶ谷の一角、新屋敷と呼ばれた場末の屋敷町の空き屋敷の前で、何十匹もの蛇がとぐろを巻いて盛り上がり、そこへ現れた十四五の武家娘が平気で腕を差し入れて切髪を取り出したという一件である。迷信の生きていた江戸の夏の風景が描かれる。

あらすじ

慶応元年六月二十三日の雷雨の夜、浅草三好町の米屋尾張屋の蔵の前に雷が落ち、一人娘のお朝が死に、主人の遠縁の重吉が気を失った。女中のおかんは雷獣が駆け回るのを見たという。七月六日の夜、また雷雨のさなかに、重吉が同じ蔵の前で顔や手を掻きむしられて死んでおり、雷獣の仕業とされた。子分の庄太の知らせを受けた半七は、重吉と同じ下野の出のおかんに目をつけて問い詰める。重吉はおかんと夫婦約束をしながらお朝とも通じ、お朝が身ごもると二人は心中を図った。お朝が鼠捕り粉を飲んだその瞬間に雷が落ち、お朝は死に、重吉は助かったのだった。おかんは心中の浮き名を立たせまいと毒の袋を隠した。やがて重吉が尾張屋の跡継ぎになりそうになり、一緒に逃げてくれと迫ったおかんは、お朝を弔って独り身で通すと言う重吉を絞め殺し、雷獣の仕業に見せかけて顔を掻きむしったのだった。おかんは死罪となった。続く二つ目の話は文久三年六月末、千駄ヶ谷の新屋敷の空き屋敷の前で、何十匹もの蛇がとぐろを巻いて盛り上がる。玉があると噂されるなか、十四五の武家娘が腕を差し入れて女の切髪の束をつかみ出して去り、翌朝その娘が同じ場所で刺し殺されていた。半七が蛇捕りの九助を調べると、髪を焼けば蛇が寄るという言い伝えを試したのだった。殺されたおとくは武家娘を装った十七の女の掏摸で、仲間のおもよとお大に、度胸比べの意地の張り合いから刺し殺されていた。二人は渋谷の隠れ家で捕らえられた。

登場人物

冒頭部(原文より)

     一  八月はじめの朝、わたしが赤坂へたずねてゆくと、半七老人は縁側に薄縁をしいて、新聞を読んでいた。  狭い庭にはゆうべの雨のあとが乾かないで、白と薄むらさきと柿色とをまぜ栽えにした朝顔ふた鉢と、まだ葉の伸びない雁来紅の一と鉢とが、つい鼻さきに生き生きと美しく湿れていた。

「半七捕物帳 雷獣と蛇」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

 老人の話が済んだ頃から、空はだんだんに薄明るくなって来たが、風は死んだように吹かなくなった。風通しのいいのを自慢にしているこの六畳の座敷も息苦しいように蒸し暑くなって、遠い空では時々に雷の音も低くきこえたが、ここへは夕立を運んで来そうにも見えなかった。 「こいつあ降りません。ただ蒸すばかりですよ」と、老人は顔をしかめたが、やがて又笑い出した。「これじゃあ金儲けも出来ませんね」  成程これでは雷獣も飛び込んで来そうも無かった。

「半七捕物帳 雷獣と蛇」岡本綺堂(青空文庫)

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