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半七捕物帳 少年少女の死(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

踊りの楽屋から消えた娘

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
11,006字
読了目安
約22分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。明治の東京で自転車が子どもを轢いた騒ぎを枕に、半七老人が「一番怖いのはやっぱり人間です」と、江戸で子どもが命を落とした二つの事件を続けて語る。一つは元治元年、外神田の貸席で開かれた踊りの大浚いの楽屋から、出番を待つ九つの娘が忽然と姿を消す話。もう一つは慶応三年、芝の裏長屋で幼い子どもが相次いで急死する話である。短い二話を並べ、目に見えない災いの怖さを描く。

あらすじ

自転車の事故の話から、半七老人は子どもが巻き込まれた昔の事件を二つ語る。元治元年三月、外神田の貸席田原屋で、踊りの師匠藤間光奴の大浚いが開かれる。大混雑の楽屋で、「靭猿」の奴に扮した質屋大和屋の娘おてい、九つが幕開き直前に姿を消す。神隠しかと騒ぐなか、居合わせた半七は庭を調べ、縁の下に絞め殺されたおていの亡骸を見つける。首に巻かれていたのは師匠が配った藤の柄の手拭いで、そこに薄い鉄漿の歯形が残っていたことから、半七は鉄漿をつけた女に的を絞る。犯人は田原屋の女中頭おはまだった。かつて奉公先の主人の子を産みながら引き離され、それ以来よその子に辛く当たるようになっていた彼女は、同じ年頃の美しいおていを見て発作的に殺したのだった。もう一つは慶応三年、芝田町の大工由五郎の六つの息子が急死する。由五郎に責められた女房は海に身を投げた。通夜の席で紙屑屋の女房が、数日前に死んだ自分の子の玩具だった蛙の水出しを由松にやったと悔やむのを、半七は聞き逃さない。水出しの出所は露月町の刀屋山城屋だった。後妻のお菊が継子を殺そうと蛙の口に毒を塗ったが思いとどまり、女中お咲に捨てさせたところ、お咲が紙屑屋にやってしまったのである。お菊は死罪、お咲は遠島となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

「きのうは家のまえで大騒ぎがありましたよ」と、半七老人は云った。 「どうしたんです。何があったんです」 「なにね、五つばかりの子供が自転車に轢かれたんですよ。この横町の煙草屋の娘で、可愛らしい子でしたっけが、どこかの会社の若い人の乗っている自転車に突きあたって……。いえ、死にゃあしませんでしたけれど、顔へ疵をこしらえて……。女の子ですから、あれがひどい引っ吊りにならなければようござんすがね。一体この頃のように下手な素人がむやみに自転車を乗りまわすのは、まったく不用心ですよ」

「半七捕物帳 少年少女の死」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「そいつはなかなか素捷い奴で、山城屋の女房と女中が奉行所へ呼ばれたと聞くと、すぐに夜逃げをして、どこへ行ったか判らなくなったんです。そのうち例の瓦解で、江戸も東京となってしまいましたから、詮議もそれぎりで消えました。運のいい奴ですね」 「そうすると、その水出しのことはあなたの種出しなんですね」 「お通夜の晩に、紙屑屋の女房がふと水出しのことをしゃべったのが手がかりで、こんな大事件をほじくり出してしまいました。いつかあなたに『筆屋の娘』のお話をしたことがありましょう。あれはこの翌月のことで、世間に似たようなことは幾らもあるもんです」

「半七捕物帳 少年少女の死」岡本綺堂(青空文庫)

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