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半七捕物帳 正雪の絵馬(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

謀叛人ゆかりの絵馬に憑かれて

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
26,076字
読了目安
約52分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。明治三十年の秋、新聞連載の塚原渋柿園『由井正雪』を愛読する半七老人が、堀ノ内の先、和田村の大宮八幡に懸かっていた由井正雪奉納と伝わる白鷹の古い絵馬の話を持ち出す。安政元年の春、四谷大木戸の老舗の油屋丸多の主人は絵馬の収集にのめり込み、その「正雪の絵馬」を手に入れたと仲間に見せびらかす。謀叛人ゆかりの品を盗み出したという噂がたって、店は窮地に陥る。物に憑かれた人の哀れさと、江戸近郊の淀橋の火薬製造所で実際に起きた爆発事故とを織り込んだ、長めの一話。

あらすじ

安政元年三月、四谷大木戸の油屋丸多の主人多左衛門は、絵馬収集の会で、大宮八幡から偽物とすり替えて盗み出したという由井正雪の絵馬を自慢する。噂を聞きつけたお城坊主の次男牧野万次郎は、謀叛人の絵馬を盗んで秘蔵するのは重罪だと脅し、揉み消し料として二百両を取ったうえ、数千両を要求する。追いつめられた多左衛門は絵馬を抱えて家出し、若い番頭の幸八が亀吉を通じて半七に助けを求める。半七が大宮八幡を調べると、社の絵馬は本物で、去年、町人ふうの男と女が絵を写しに来ていた。偽物を作った四谷塩町の絵馬屋大津屋の主人重兵衛は、偽の絵馬を売りつけたうえ、娘お絹と通じている万次郎を使って丸多を強請っていたのだった。やがて多左衛門は追分の土手で首をくくった姿で見つかるが、半七は死骸の爪と首の傷から絞殺と見抜く。その後、重兵衛の囲う女絵師孤芳は夜逃げ同様に引っ越し、お絹も姿を消す。墓参りの帰りに、幸八らが淀橋の孤芳の家で主人の風呂敷が干してあるのに気づき、半七らは六月十日の夜に踏み込む。家出前に重兵衛は万次郎を連れ出しており、明け方に戻ったところを問いつめると、そのとき淀橋の火薬製造所が三度にわたって爆発した。半七は爆風のなかで重兵衛を捕らえる。重兵衛は多左衛門を家へ連れ戻そうとして争い、絞め殺していた。お絹は孤芳と通じた万次郎に刺されて床下に埋められており、万次郎は川で死骸となり、孤芳は行方知れずとなった。

登場人物

冒頭部(原文より)

これも明治三十年の秋と記憶している。十月はじめの日曜日の朝、わたしが例によって半七老人を訪問すると、老人は六畳の座敷の縁側に近いところに坐って、東京日日新聞を読んでいた。老人は歴史小説が好きで、先月から連載中の塚原渋柿園氏作『由井正雪』を愛読しているというのである。半七老人のような人物が歴史小説の愛読者であるというのは、なんだか不似合いのようにも思われるが、その説明はこうであった。

「半七捕物帳 正雪の絵馬」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「孤芳は無事でしたか」 「さあ、それが不思議で……。孤芳は無事に逃げたのか、どこへか吹き飛ばされたのか、ゆくえが知れなくなりました。万次郎の死骸は川のなかで発見されました。それも重兵衛に突き落とされたのか、夜が明けてぼんやり帰って来たところを吹き飛ばされたのか、確かなことは判りません。ほかにも死骸が浮いていましたから、あるいは爆発のために吹き落とされたのかも知れません。お絹の死骸は床下に埋めてありました。まあ、お話は大抵ここらで切り上げましょう。いや、どうも御退屈で……」  その話の終るのを待っていたように、老婢は膳を運び出して来て、わたしの前に鰻めしが置かれた。

「半七捕物帳 正雪の絵馬」岡本綺堂(青空文庫)

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