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半七捕物帳 唐人飴(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

羅生門横町に落ちた唐人の腕

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
23,385字
読了目安
約47分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。明治の東京から消えていく飴売りの姿を惜しむ一文に始まり、半七老人が、更紗の唐人服に唐人笠で踊りながら飴を売り歩いた江戸の「唐人飴」の話をする。嘉永四年の春、高野長英が捕らわれて自害した青山百人町のあたりに、出どころの知れない若い唐人飴売りが現れ、隠密だ、いや盗賊だと噂される。やがて、二年続けて人の片腕が斬り落とされて「羅生門横町」と呼ばれる横町に、唐人服の袖をつけた片腕が落ちていた。場末の宮芝居の楽屋などを舞台にした一話。

あらすじ

嘉永四年四月、青山久保町の御熊野横町、通称羅生門横町で、常磐津の師匠文字吉が唐人服の袖のついた男の片腕を見つけたと騒ぐ。町では怪しまれていた唐人飴売りが斬られたと噂するが、当の飴売りは両腕そろって現れる。子分の庄太から話を聞いた半七は青山へ出向き、鳳閣寺の女役者坂東小三一座の宮芝居で「国姓爺合戦」を見る。唐人役の衣装は唐人飴そっくりで、虎の縫いぐるみの中身は女一座にいるはずのない男だと見抜く。その男、市川照之助が善光寺の仁王に一心に祈る姿を見た翌朝、羅生門横町に二本目の唐人の片腕が落ちる。外科医を洗うと、斬られたのは原宿の顔役弥兵衛の子分角兵衛だった。最初の腕は照之助の兄で役者の岩蔵のもので、照之助兄弟を一座へ引き抜いた件の談判に唐人の衣装のまま出向いた岩蔵が、売り言葉に買い言葉で角兵衛に腕を斬らせたのだった。照之助は仁王に力を祈って兄の仇を討ち、同じように羅生門横町へ腕を捨てたのである。小三の訴えで文字吉の家へ踏み込むと、岩蔵が寝ており、二階の戸棚には、文字吉が嫉妬から絞め殺した一座の花形小三津の死骸があった。文字吉は女弟子たちを手玉に取って金を巻き上げていたのである。照之助は遠島となり、謎の飴売りは勘当された小間物屋の道楽息子と知れた。

登場人物

冒頭部(原文より)

こんにちでも全く跡を絶ったというのではないが、東京市中に飴売りのすがたを見ることが少なくなった。明治時代までは鉦をたたいて売りに来る飴売りがすこぶる多く、そこらの辻に屋台の荷をおろして、子どもを相手にいろいろの飴細工を売る。この飴細工と粉細工とが江戸時代の形見といったような大道商人であったが、キャラメルやドロップをしゃぶる現代の子ども達からだんだんに見捨てられて、東京市のまん中からは昔の姿を消して行くらしく、場末の町などで折りおりに見かける飴売りにも若い人は殆ど無い。おおかたは水洟をすすっているような老人であるのも、そこに移り行く世のすがたが思われて、一種の哀愁を誘い出さぬでもない。

「半七捕物帳 唐人飴」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

相当の店の若旦那が飴屋になって、鉦をたたいて踊り歩く。他人から見れば随分気の毒なわけですが、当人頗るのん気で、往来でカンカンノウを踊っているのが面白いという始末。どうも困ったもので、これでは勘当はなかなか赦りません。おまけに女親が甘いので、勘当とはいいながら内証で小遣いぐらいは届けてくれるので、飴は売れても売れないでも構わない。道楽半分に歌ったり踊ったりしている。正体を洗えばこういう奴で、隠密も泥坊もあったもんじゃない。実に大笑いでした。それでも唐人の腕が二度も斬られたと云うので、自分もなんだか気味が悪くなって、四、五日ばかり場所をかえて、青山辺へは寄り付かなかったんですが、馴染のない場末は面白くないと見えて、又もや青山辺へ立ち廻って来たところを庄太に押さえられたんです。  青山辺を荒らした賊は別にあるので、これは又あらためてお話をする時がありましょう。全次郎はその正体が判ったので、俄かに信用を回復して、飴もよく売れるようになったそうです。何が仕合わせになるか判りません」

「半七捕物帳 唐人飴」岡本綺堂(青空文庫)

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