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半七捕物帳 薄雲の碁盤(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

碁盤に載せられた女の生首

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
19,486字
読了目安
約39分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。碁会所帰りの半七老人が、下谷坂本の養玉院に伝わる高尾の碁盤から、吉原三浦屋の名妓薄雲の碁盤にまつわる言い伝えを語り出す。飼い猫が主人を大蛇から守って首を打たれ、その爪の痕が金蒔絵に残るという碁盤で、深川六間堀の質屋柘榴伊勢屋の蔵に置くと鼠が出なくなったといわれた。文久三年十一月、本所竪川の旗本屋敷の門前に、碁盤に載せた若い女の生首がさらされる。血なまぐさい幕末の世相のなかで、首の主と碁盤の出どころを追う一話。

あらすじ

文久三年十一月、本所二つ目の旗本小栗昌之助の屋敷の門前に、蒔絵の古い碁盤に載せた二十二三の女の生首がさらされる。顔には薄いあばたがあった。用人の頼みで半七は子分の松吉と首を改め、どこかで見た顔だと感じる。亀戸で行き会った柳橋の芸者から、元芸者のお俊が深川の質屋柘榴伊勢屋の主人由兵衛に囲われ、相生町に住んでいると聞く。だが、お俊は評判の器量よしで、あばたはないという。お俊の家を訪ねると、前日に急に引っ越して空き家になっていた。柳橋の船宿で、伊勢屋のひいきの力士万力甚五郎が花見帰りに旗本の放蕩者に脇差を奪われて桟橋で詫びさせられ、抱え屋敷をしくじった一件を聞き、その場にお俊が相手の船に乗り合わせていたことを知る。碁盤は伊勢屋に伝わる薄雲の碁盤で、鼠嫌いのお俊の家に置かれていた。万力の脇差を奪ったのは小栗の弟で、深川の旗本へ養子に行った銀之助であり、お俊の家にも出入りしていた。半七が伊勢屋の主人を呼び出すと、万力は姿を消しており、その家の床下から首のない女の亡骸が出る。忠義者の万力は、旦那を欺いて銀之助を引き入れるお俊を憎み、碁盤を受け取りに行った夜、橋の上で絞め殺して首を切り、小栗家の門前にさらしたのだった。お俊はあばたを白粉で隠していた。万力は郷里の野州鹿沼の先祖の墓前で腹を切った。

登場人物

冒頭部(原文より)

ある日、例のごとく半七老人を赤坂の家にたずねると、老人はあたかも近所の碁会所から帰って来た所であった。 「あなたは碁がお好きですか」と、わたしは訊いた。 「いいえ、別に好きという程でもなく、いわゆる髪結床将棋のお仲間ですがね」と、半七老人は笑った。「御承知の通りの閑人で、からだの始末に困っている。といって、毎日あても無しにぶらぶら出歩いてもいられないので、まあ、暇潰しに出かけると云うだけの事ですよ」  それから糸を引いて、碁や将棋のうわさが出ると、話のうちに老人はこんなことを云い出した。

「半七捕物帳 薄雲の碁盤」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「碁盤は伊勢屋へ戻されましたが、いくら薄雲の由来付きでも、もうこうなってはどうにもなりません。伊勢屋ではそれを菩提寺へ送って、大勢の坊さんにお経を読ませて、寺の庭で焼き捨ててしまったそうです。その煙りの中から女の首をくわえた猫があらわれたなぞと、本当らしく吹聴する者もありましたが、これはヨタに決まっています。  銀之助は、その歳の暮に本家へ帰りました。そうしてぶらぶらしているうちに、慶応四年の上野の戦争、下谷の辺で死にました。と云っても、彰義隊に加わったわけじゃあない。町人の風をして、手拭をかぶって、戦争見物に出かけると、流れ玉にあたって路傍で往生、いかにもこの男らしい最期でした」

「半七捕物帳 薄雲の碁盤」岡本綺堂(青空文庫)

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