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半七捕物帳 夜叉神堂(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

鬼の面箱から出た小判

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
11,713字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。半七老人が自分の関わらなかった事件を「請け売り」として語る趣向で、探索するのは麻布の老練な御用聞き、竜土の兼松である。文化九年の春、渋谷の長谷寺で開かれた京都清水観音の出開帳で、小銭を組み合わせて作り、前立てに慶長小判と二朱銀をあしらった五尺あまりの大兜が評判になる。寺社方の指図で金銀を取り外すことになったその晩、小判と銀が消えた。開帳でにぎわう江戸郊外の寺と、腫れ物に効くという夜叉神堂の鬼の面の奉納の風習を描く短めの一話。

あらすじ

文化九年三月、渋谷長谷寺の清水観音の出開帳で、小銭で組み上げた大兜が評判となる。寺社方から前立ての小判と二朱銀を取り外せと命じられた翌朝、小判五枚と二朱銀が消えていた。探索を命じられた竜土の兼松は、取り外しの指図を知る内輪の者の仕業とにらみ、子分の勘太と夕方の門前町を探る。寺に入っていく女を勘太が尾けると、女は名物の夜叉神堂で、奉納された張子の鬼の面の箱をかき回していた。問いつめると逃げようとし、帯から二朱銀が落ちる。六本木の鮨屋の女房おぎんで、亭主の腫れ物の平癒を願いに来て、箱の中の銀を見つけ出来心で持ち出そうとしたという。箱の底からは小判五枚も出た。二人が堂の陰に張り込むと、夜ふけに鬼の面をかぶった坊主頭の男が現れる。近くの万隆寺の役僧教重で、開帳の読経に雇われ、品川通いの金ほしさに兜の金銀をはがしたのだった。だが、盗んだあと汗で張子の面が顔に貼りつき、夜叉神の祟りかと恐れて悔い改め、小判を面箱に隠し、今夜は持ち帰った二朱銀を返しに来たのだった。教重はおぎんの品川勤め時代のなじみ客だった。兼松は二人を内々に許し、盗人の身がすくんで金を置いていったという噂で開帳はかえって繁昌した。

登場人物

冒頭部(原文より)

これも例の半七老人の話である。但し自分はこの一件に直接の関係はなく、いわば請け売りのお話であるから、多少の聞き違いがあるかも知れませんと、前提をして老人は語る。 「今でも無いことはありませんが、昔は祭礼や開帳には造り物が出来たものです。殊にお開帳には必ず種々の造り物が出来て、それが一つの呼び物になったのですから、皆それぞれに工夫を凝らしたものです。その造り物は奉納で、無料見物の出来るように、諸人の眼に付くような場所に飾ってあるのもあり、又は普通の観世物のように木戸銭を取って見せるのもありました。いずれにしてもお開帳に造り物はお定まりで、今度のお開帳にはどんな造り物が出来たとか云って、参詣半分、見物半分で、みんなぞろぞろ押し掛けたのです。まじめな信心者だけでは、どこのお開帳もうまく行かなかったと見えます。

「半七捕物帳 夜叉神堂」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

奇を好む江戸人は眼を丸くして、その噂に耳をかたむけた。それが一種の宣伝になって、長谷寺の開帳はますます繁昌した。夜叉神堂には線香のけむりが充満して、鬼の面は大勢の手に押しいただかれた。  万隆寺の教重は無事に開帳六十日間を勤めたが、その後に下総の末寺に送られたと云う。

「半七捕物帳 夜叉神堂」岡本綺堂(青空文庫)

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