アプリで読む

無料・登録不要

半七捕物帳 幽霊の観世物(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

幽霊小屋の暗がりで死んだ女

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 

文字数
18,615字
読了目安
約37分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の一編。銀座の地蔵の縁日でろくろ首の見世物小屋の看板を眺めていた語り手が、半七老人に見つかったことから、江戸の見世物の話になる。暗く狭い通路に幽霊や獄門首、生首の仕掛けを並べ、無事に通り抜ければ反物をくれるという「幽霊の観世物」である。安政元年の夏、浅草仁王門脇のこの小屋で、照降町の老舗の下駄屋駿河屋の女隠居が幽霊に驚いて死んだとされる。怖いもの見たさの見世物の仕掛けを詳しく紹介しながら、一件の裏側をたどる一話。

あらすじ

安政元年七月末、浅草仁王門脇の幽霊の見世物小屋で、景品目当てに怖い道を進んだ下谷の大工長助が、柳の下の赤子を抱いた幽霊の先で倒れていた女につまずき、むしりつかれて逃げ出す。女は照降町の下駄屋駿河屋の女隠居お半で、幽霊に驚いて心の臓を破ったものとされた。不審を抱いた半七は、子分の松吉と善八に調べさせる。お半は四十を過ぎても水々しく、早くに隠居して出歩きが多く、葺屋町の遊び人音造と通じていた。若主人の養子信次郎は両国の水茶屋の女お米となじみで、あの日、義母の帰りが遅いと聞くや、すぐに見世物の死人ではと気づいていた。木戸番の話では、お半のあとから若い男、続いて四十ばかりの男と女の二人連れが入ったという。半七は客を装って怖い道に入り、髷をつかみに来た猿の怪物を取り押さえる。怖い道には景品を出させないための生きた化け物が潜んでおり、猿役の小僧と幽霊役の女形の役者は、若い男に抱えられたお半を、後から来た男が鉄槌で打ち倒すのを見ていた。その夜、信次郎は親父橋で音造に刺され、連れの大工清五郎が音造を取り押さえる。清五郎こそお米の叔父で、鉄槌の男だった。信次郎はお半と道ならぬ仲にあり、音造との関係に嫉妬し、お米を家に入れるためにも、清五郎にそそのかされて義母殺しを企てたのである。信次郎は死の床で白状し、音造と清五郎は死罪となった。

登場人物

冒頭部(原文より)

七月七日、梅雨あがりの暑い宵であったと記憶している。そのころ私は銀座の新聞社に勤めていたので、社から帰る途中、銀座の地蔵の縁日をひやかして歩いた。電車のまだ開通しない時代であるから、尾張町の横町から三十間堀の河岸へかけて、いろいろの露店がならんでいた。河岸の方には観世物小屋と植木屋が多かった。  観世物は剣舞、大蛇、ろくろ首のたぐいである。私はおびただしい人出のなかを揉まれながら、今や河岸通りの観世物小屋の前へ出て、ろくろ首の娘の看板をうっとりと眺めていると、黙って私の肩をたたく人がある、振り返ると、半七老人がにやにや笑いながら立っていた。洋服を着た若い者が、口をあいてろくろ首の看板をながめているなどは、余りいい図ではないに相違ない。飛んだところを老人に見つけられて、私は少々赤面したような気味で、あわてて挨拶した。老人は京橋辺の知人のところへ中元の礼に行った帰り路だとか云うことで、ふた言三言立ち話をして別れた。

「半七捕物帳 幽霊の観世物」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

音造も清五郎も無論死罪ですが、お米だけは早くも姿を隠しました。それから七、八年の後に、両国辺の人たちが大山参りに出かけると、その途中の達磨茶屋のような店で、お米によく似た女を見かけたと云うのですが、江戸末期のごたごたの際ですから、そんなところまでは詮議の手がとどかず、とうとう其の儘になってしまいました」

「半七捕物帳 幽霊の観世物」岡本綺堂(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品