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半七捕物帳 湯屋の二階(岡本綺堂)のあらすじ・登場人物

湯屋の二階に毎日通う謎の武士

  • ミステリ
  • 歴史

岡本綺堂 1917年(大正6年) 「文芸倶楽部」

文字数
15,428字
読了目安
約31分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

岡本綺堂「半七捕物帳」の第四話で、1917年(大正6年)に「文芸倶楽部」に掲載された。正月に訪ねてきた「わたし」に、半七老人が珍しく自分の「遣り損じ」の懺悔話として語る一編。文久三年の正月、愛宕下で湯屋を営む手先の熊蔵(あだ名は湯屋熊、法螺熊)が、暮れも正月も休まず湯屋の二階に入りびたる二人連れの武士を怪しんで半七に知らせる。茶や菓子を売る女が詰め、客が昼寝や将棋に興じた江戸の銭湯の二階の風俗を舞台に、黒船以来の物騒な世相が影を落とす。手柄話の多いシリーズのなかで、見込み違いをおかしみとともに振り返る趣向が目を引く。

あらすじ

文久三年の正月、愛宕下で湯屋を開いている手先の熊蔵が、去年の霜月から暮れも元日も欠かさず二階に来る二人連れの若い武士がいると半七に知らせる。熊蔵は、二人が「嚇かして取っ捉まえる」と相談するのを立ち聞きし、軍用金の押し借りをする偽浪人の一味ではないかと疑う。湯に入って一人を観察した半七は、左足の発達から本物の武士、それも西国の藩士と見る。二人が二階番の女お吉に預けた箱をあけると、干からびた人間の首と、龍とも蛇ともつかない動物の頭が出てきた。翌朝、町内の質屋・伊勢屋に浪人風の二人組が押し入り、八十両を奪う。半七は、例の武士が刀屋に泥鮫の皮を売るのを目撃し、伊勢屋で鮫の皮も奪われたと聞いて胸を躍らせるが、盗まれたのは仕上げ済みの白鮫だった。そのすきにお吉と武士の一人は箱を持ち出して姿を消す。翌朝、背の高いもう一人の武士・梶井源五郎が現れ、半七はついに十手を突きつけるが、事情はお吉が言ったとおりの仇討だった。梶井と高島弥七は、品川の帰りに同僚が斬殺された場で下手人を取り逃がした咎で、百日のうちに江戸で仇を探し出す助太刀を命じられていた。だが二人はくたびれて湯屋の二階で遊び暮らし、高島はお吉と深い仲になって、浪人を覚悟して駆け落ちしたのだった。箱の中身は高島家に伝わる朝鮮渡りの呪いの品、泥鮫は祖父が長崎で得たものらしい。質屋の押し込みはまったく別の者で、のちに吉原で捕まった。半七は大しくじりだったと笑って振り返る。

登場人物

冒頭部(原文より)

一  ある年の正月に私はまた老人をたずねた。 「おめでとうございます」 「おめでとうございます。当年も相変りませず……」  半七老人に行儀正しく新年の寿を述べられて、書生流のわたしは少し面食らった。

「半七捕物帳 湯屋の二階」岡本綺堂(青空文庫)

末尾部(原文より)

「今でこそ話をすれ、その時にはわたくしも引っ込みが付きませんでしたよ」と、半七老人は再び額を撫でながら云った。「なまじ十手を振り廻したり何かしただけに猶々始末が付きませんや。でも、梶井という武士も案外捌けた人で、一緒に笑ってくれましたから、まあ、まあ、どうにか納まりは付きましたよ。片方の高島という武士はそれぎり屋敷へ帰らなかったそうです。お吉も音沙汰がありませんでした。二人は道行を極めて、なんでも神奈川辺に隠れているとかいう噂もありましたが、その後どうしましたかしら。肝腎のかたき討の方は、これもどうなったか聞きませんでしたが、梶井という人は国へも追い返されないで、その後にも湯屋の二階へときどき遊びに来ました。質屋へはいった浪人はまったく別物で、それは後に吉原で御用になりました。明治になってから或る人に訊きますと、そのおかしな人間の首というのは多分木乃伊のたぐいだろうという話でしたが、どうですかねえ。なにしろ、よっぽど変なものでした」

「半七捕物帳 湯屋の二階」岡本綺堂(青空文庫)

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